下校2
適当に本の話をしながら歩いた。
僕に比べると鷹祭さんは歩くスピードがのんびりなので、最初はもどかしい思いをしたが、話しているうちにどうでも良くなってきた。
むしろ結構話が弾んで楽しかったので、途中からはもっと話していたくて僕の方が歩くペースが遅くなったくらいだ。
鷹祭さんはこんなことを言った。
「こんなに本が好きなんだから、君の部屋はきっと本で埋め尽くされてるんだろうなぁ」
「そっちこそ」
「私の部屋は割と片付いてるよ?」
「へぇー」
「む。その目は疑ってるな?」
彼女はジト目で睨んできた。
「別に。ってかずっと僕の家に向かって歩いてるけど大丈夫なの?」
「ん? 大丈夫ってどういうこと?」
「もし鷹祭さんの家が同じ方向ならいいんだけどさ」
「いや、全然違う方向だね。むしろ真反対」
「じゃあなんで僕についてきてんの? アホなの?」
彼女はなんでもないことのように答えた。
「踊橋君の部屋を一目見てみようと思って」
「家にあげるとでも?」
「おーっと? その反応は見られちゃマズいものでもあるのかしら?」
「……ないです」
「一瞬間があったな。これはますます部屋に入ってみたいねぇ。私は人の弱みを握るのが大好きだからさ」
「最低じゃん」
とかなんとか言ってる間に僕の家に着いてしまった。
「お、ここかい?」
「そうだけど……。ほんとに入るつもり?」
「当たり前じゃん。冗談のために家と真反対方向に来たりしないよ」
「はぁ……。まぁ来ちゃったものは仕方ないか」
僕は玄関の鍵を開けた。
彼女は遠慮なく入ってきた。
「お邪魔しまーす」
「どうぞ。一応言っとくけど、すぐに帰ってね」
脱いだ靴を丁寧に揃えている彼女に向かって言った。
彼女は不思議そうに首を傾げた。
「なんで?」
「今まで友達一人連れてこなかったのに、急に君みたいなのを連れ込んだのがバレたら親が泡吹いてぶっ倒れる」
「へぇー。そりゃ大変だ。友達がいないってのも大変なんだねぇ」
「デリカシーはお持ちですか?」
「すみません。家に忘れてきました」
「あー。それじゃあちょっと入場できませんね。お出口はあちらになります」
「まだ入ったばっかなのに帰らそうとしないで」