逃げる
人ごみをかき分けて、俺は必死に逃げていた。俺に突き飛ばされた人は最初は何をするんだと俺を睨むが、俺が逃げてきた方に視線を向けてハッとして、俺と同じように人ごみをかき分けて逃げ始めた。小さな女の子も突き飛ばして転ばしてしまい、母親に怒鳴られたが、その怒鳴り声も、すぐに悲鳴に変わった。とにかく、逃げた。他人を押しのけ、突き飛ばしながら、強引に人ごみをかき分ける。だが、徐々に悲鳴が多くなり、状況を理解し始めた人ごみも俺と同じ方向に逃げ始めて、人ごみをかき分ける必要はなくなっていった。
とにかく、逃げた。安全な場所はどこかにないかと、人々の流れを追いながら、走り続けた。銃声が聞こえた。見ると拳銃を抜いた警察官があいつらに向けて発砲していた。警察に助けてもらおうとその警官に向かって走る。だが、俺が辿り着く前に警察官はリボルバーの弾丸を撃ち尽くして、あいつらに襲われていた。
「うわっ」
慌てて回れ右しようとしたが、俺を追ってきたあいつらが背後に迫っていた。警察官を襲ったやつらが、俺に気づく、挟み撃ちだ。襲われて噛まれた警官もゆっくり、ゾンビになって起き上がっていた。逃げ場はなく、俺も、あいつらの仲間入りした。
