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赤い部屋に気を付けろ

「赤い部屋に連れ込まれたら終わりなんだ」
「どうやって連れ込まれるんだね」
「だから、はっと気が付いたら、その部屋の中に放り込まれてて、出口がなくて、慌てて二人で出口を探そうとしたら、ハッと気が付いたときは加藤が殺されてて、俺だけ部屋の外に放り出されてたんだ」
「つまり、君は友達を見捨てて一人逃げ出したと?」
「いや、だから、いつの間にか殺されてて、残った俺が解放された。理由は知らない」
「そんな曖昧な話を警察が信じると?」
「いや、だから・・・あっ、ほら、刑事さん、部屋が赤く」
「な、なに? 手品か? いつの間に部屋を、警察をからかうつもりなら」
「いや、俺のせいじゃ、け、刑事さん、う、後ろ」
「あ? 後ろ?」
「あ、ああ・・・」
「なんで、また俺ひとりだけ生かすんだ? ひとり生き残って、慌てる俺を見て楽しんでるのか?」
怪談というものは、それを目撃した誰かが世間に伝えなければ、広がらない。その恐怖の伝道者に選ばれたのだと、俺が気づくのは少し先のことだ。


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