私は悪くない。
私は悪くない。彼女がバラバラ遺体で見つかった被害者と中学時代に仲が悪かったのは事実であり、それを呟いただけで、彼女が殺人犯と呟いたわけではなかった。だが、バラバラ殺人というセンセーショナルな事件だったため拡散は速く、その中学時代に被害者と仲が悪かったその子が犯人という説がいつの間にか定着し、彼女の勤め先や、卒業アルバムの顔写真までネットに公開されるようになっていた。
そして、被害者の元恋人が真犯人として捕まっても、彼女がその元恋人を寝取って殺させたというサスペンス映画のようなストーリーを思いつくやつも出てきて、彼女は警察や弁護士に相談して、虚偽の呟きをする人は通報すると発信した。そうすると、事態は少しは落ち着いたように思えた頃、見知らぬ番号から私の携帯に電話があった。出ると、彼女からで、
「あなたが、デマの発信元ね、話があるから、うちに来て」
と呼び出された。私はきちんと説明して、殺人犯だとデマを流したつもりはないと言い訳しなければと思い、彼女のアパートを聞き、二人きりできちんと話をすることにした。
が、ふっと目を開けると、私は縛られていた。
「あら、お目覚め、ちょっと薬が足りなかったかしら?」
縛られ床に転がされた私を彼女が見下ろしていた。
彼女の部屋に来て、出されたコーヒーを飲み、急に眠気に襲われてこのざまだ。
恨まれるのは当然だと思ったが、まさか、ここまでするとは。
「ちょ、なによ、これ・・・」
「何って、こっちが聞きたいわ、どうして、私が犯人だって分かったの? 完璧に自分の手を汚さずあの女を始末したってのに・・・」
「な、なに、まさか・・・」
ネットの憶測が事実で、彼女が恋人を寝取って殺させたのが事実だったというのか。
「たく、自分の手を汚さずに殺せたと喜んでたのに、でも、あんたを殺せば、もう安心よね」
私は、そのまま殺され、数名ほどデマを拡散したとして検挙されたようだが彼女が犯人説はネットのデマとして忘れ去られた。その後、彼女はネットに、私はこうして殺人犯にされたという自分に都合のいい記事を書き、今も平然と生きている。