指切りげんまん
「指切りげんまん嘘ついたら針千本のぉ~ます♪」
と、彼女は楽しそうに歌っていた。こっちは、ちっとも楽しくない、のどに刺さる針の激痛に冷や汗がタラタラ垂れ、ビクビク震えながら痛みに耐え続けた。
「ほら、ほら、嘘つきさんは、ちゃんと針飲まなくちゃだめですよ?」
「ごふぉ、お、げふぉ」
なにか言い返したかったが、無数の針が刺さってあふれ出る血が肺の方に流れ込み、ごふぉごふぉとせき込み、言葉は出ず、赤い血交じりの唾液が唇から溢れる。
細長い鋭角な針は、飲み込めず、ほとんど、のどの途中で、魚の骨のように引っかかっていた。
これなら、一思いにさっさと殺された方がマシだ。
「ごふぉ、ごふぉ、ころふぇ・・・」
「何言ってるのか、さっぱり、わかんない。早く針を飲み込みなさいよ」
彼女は俺の首根っこを掴み、針が落ちやすいように俺の身体をゆすった。が、そんなことをしても、千本の縫い針が、すんなり喉を通り抜けることはなく、俺は、のどからあふれ出る血が肺を詰まらせ、苦しみ悶えながら死んだ。当然、彼女は警察に捕まったが、弁護士が、加害者である俺が、彼女に浮気で嘘をついたのが、そもそもの原因と彼女の厳刑を求めて、実刑が出て服役して出所後、彼女は老衰で天寿を全うしたという。