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勘違い

「うそ、なんで・・・」
ちゃんとホラー映画で観たように女の遺体を弔ってあげたのに、その化け物はずりずりと腕を使い、こちらに這い寄ってきた。
「ちゃんと、弔ってあげたでしょ、なんで、また出て来るのよ」
長い髪を揺らしながら、ずんずんと迫ってくる。おかしい、こんなはずじゃない。映画なら、遺体をきちんと弔ってあげたら、もう大丈夫なはず、それなのに、この女しつこい。金縛りにあっているのか、身体が動かない。畜生、死んでたまるか。生への執着心の力か、なんとか足が動き、私はその女を蹴った。
「この、よるなっ!」
蹴った瞬間、ハッと気が付いた。髪が長いから女と勘違いしていたが、蹴った瞬間見えた、長い髪の下の顔は男だった。
「じゃ、私が弔ったのって、別人・・・」
いまさらミスに気づいても遅かった。そいつは、もう蹴られないように私の足をがっしり掴んでいた。

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