第十五話☆重い空気と話し合い
左京先生のお母様とは二ヶ月後に会うことに
なったんだけど、今はそんな先のことより
この状況をどうにかしなくてはならない。
事の始まりは数時間前まで遡る。
それは那々弥さんと栞菜ちゃんとマー君と
四人で買い物に行ったことから始まった。
栞菜ちゃんの洋服を買いに行くことになり、
何だったら恋の店にと行こうとした途中でなんと
那々弥さんの旦那さんに遭遇してしまったのだ。
栞菜ちゃんが生まれた時でさえ現れるなかったのに
何でこんな所に居るのだろうか?
マー君が私たち三人を守る様に那々弥さんの旦那を睨みつける。
沈黙が痛い。
「久しぶりだな那々弥」
先に口を開いたのは旦那の方だった。
私たちの間に流れる空気はまさに"険悪"
「今まで何処に居たの?」
那々弥さんの声は震え気味だった。
答える気がないのか答えに詰まっるのかまた沈黙が訪れた。
此処は街中だ。
道行く人達は私たちを不思議そうな目で見ては通りすぎて行く。
「家帰りましょう」
那々弥さんが旦那に向けて言った。
「華蓮ちゃんと佐川さんも一緒に来てくれる?」
そんなの当たり前だ。
こんな男と三人になんてさせられない。
『勿論、那々弥さんと栞菜ちゃんが心配ですから』
那々弥さんの旦那を睨みつけて居た目を一瞬だけ綻ばせた。
そして、場所は那々弥さんたちの家に。
これが一時間前の出来事である。
私たちが居た場所から那々弥さんたちの
家まではそんなに距離はない。
こうして、那々弥さん家にお邪魔することに
なったんだけど帰ってくる時も今も空気は重たい。
誰ひとり話そうとせず険悪ムードのまま時間だけが過ぎて行く……
そんな中、大人の嫌な空気を感じたのか栞菜ちゃんが大泣きした。
母親である那々弥さんもいきなり泣き出した
我が子に少し驚いていた。
『那々弥さん、栞菜ちゃん抱っこさせて下さい』
子供は大人の感情の起伏に敏感だ。
「お願い」
那々弥さんが栞菜ちゃんを私に渡した。
「それで、今更何の用?」
那々弥さんの旦那が戻って来た理由に私たちは呆れてしまった。
なんと、この男、那々弥さんにお金を貸してくれと言って来た。
何ヶ月も行方をくらましてた癖に
奥さんにお金を貸してくれとは図々しいにも程がある。
呆れてしまったのもあるが先程より空気が
重くなくなったお陰で栞菜ちゃんも大分落ち着いて来た。
話し合いの結果、那々弥さんはお金を貸したけど
此処にはもう来ないでと言って追い出した。
そして、那々弥さんの腕の中に居る
栞菜ちゃんのことを何も聞かない所か気にも止めてなかった。
父親としても旦那としても失格な男だ。