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第十一話💓君が君であるならば

僕達が同棲を始めて三ヶ月目のある日、
最寄のスーパーで風夜の両親に
ばったりあってしまった。

気が付いたのは向こうで
手を繋いでいる僕達を見て
風夜の母親が目を見開き、
小さな悲鳴をあげた。

「風夜、そういうのは極力、
家の中か人目のつかない所でやりなさい」

一方、父親は大して気にしてないらしく
苦笑はしているものの、ちょっとした
注意程度のことを言っただけだった。

多分、一緒に嫌悪感を
抱いてくれるだろうと思っていた
旦那から発せられた台詞に
愕然としただろう母親は
また、小さな悲鳴をあげた。

『すみません、無意識なもので』

風夜は悪びれもなサラッと言ってのけた。

「気持ちはわかるが、こういう時を
想定して行動しないと、
今のような状況になるんだ」

やはり、父親の方は気にしてないらしい。

『以後、気を付けますよ(๑^ ^๑)

ご忠告、ありがとうございます』

不快感丸出しの母親とは真逆で
父親の方は風夜に恋人がいることが
わかって、嬉しそうだ。

「ところで風夜、《《お嫁さん》》に
俺達のことを話てなかったのか?」

一瞬、聞き流してしまいそうな程
自然な流れで凄いことを言われた気がする。

『そうなんです(苦笑)

春弥、すみません彼は母の再婚相手なんですよ』

どおりで似てないと思った。

『彼は僕達の関係に
驚いてないみたいだけど?』

風夜より高身長の僕を
何の戸惑いもなく《《お嫁さん》》って
言えるってことはこちら側か
バイかノンケの理解者か……

「そうですね(๑•᎑•๑)

その話をするには色々ありまして
長くなりますから
何処かの店に行きましょう」

個室のある店を探し、
そこで話てくれることになった。

*:.*.:*:。∞。:*:.*.:*:。∞。:*:.*.:* 

「何であなたは驚かないのよ‼」

母親はまたしても、ヒステリックに叫んだ。

李麻(りま)には秘密にして来たが
昔から風夜の恋愛相談にのって来たし、俺自身は
バイでどちらも愛せるから驚かないし反対もしない。

さっきの雰囲気からして
同棲しているんだろう?」

前述は母親に後述は僕達に。

「自己紹介がまだだったね。

佐崎隆信(さざきたかのぶ)
四十歳の会社員で李麻の旦那で
風夜の義父(ちち)だ。

宜しく頼む(๑^ ^๑)」

どれかとは思っていたけど、当たったね。

『ご丁寧にありがとうございます。

風夜の四つ年上の三十歳で
妻で書店員をしています
井町春弥(いまちはるみ)と申します。

お察しの通り、僕達は同棲しています。

宜しくお願い致します(๑^ ^๑)』

僕達の呑気な自己紹介と旦那の
驚きの告白に母親は黙り込んだ。

「春弥君と呼んでいいかな?

俺のことも好きに呼んでくれていいから」

風夜は僕達の会話を隣で
口を挟むことなく聞いている。

『勿論です*♬೨

隆信さんと呼ばせて頂きますね』

話終えたタイミングで料理が来た。

店員は料理を置いて
そそくさと出て行った。

母親は料理が来ても
手を付けようとせず放心状態だ。

『母のことは気にしてないでください』

【こうなるだろうと
わかっていましたから】
と風夜は言った。

『私が男性しか愛せないと
カミングアウトした時に
大喧嘩になったんですよ。

隆信さんは当然のように
私の味方をしました……』

自身がバイならそうだろなぁ。

『母はあの時何故、隆信さんが
私の味方をしたのか
理解できなかったでしょうが
先程の告白で理解したと思います……

ですが、ショックでもあったんでしょう(苦笑)』

いまだに、放心状態の母親を
チラッと見て苦笑している。

僕は何も言えずに聞いている。

気まずい沈黙が流れる個室。

「息子である風夜が同性愛者だと
知った時、絶望しただろう。

俺の両親も最初、君と同じ反応をしたからな」

長く感じた沈黙を
破ったのは隆信さんだった。

それからの家族との関係を話てくれた。

今では絶縁状態らしい……

「そういう経緯があるからこそ
風夜の味方でいたかったんだ」

血の繋がりがないのに
“本当の父親”みたいだ。

『ありがとうございます‼』

風夜は隆信さんに抱き付いた。

「春弥君もこっちにおいで」

僕まで呼ばれるとは思わなかった。

近づいて行くと抱き締められた。

一人残された母親は
悔しそうに、気まずそうに
こっちを見ている。

僕が言える立場じゃないけど
少々、可哀想になるな(苦笑)

『お母さん、私達は愛し合っています。

“同性”だとか
“異性”だとか関係ないんですよ……

“井町春弥”という人物を
愛しているのであって正直、
女性だろうと男性だろうとそんなことは
些細なことでしかありません』

ちょっ、風夜⁉

言いたいことはわからなくもないけど
いきなり、何を言い出すんだか//////

「あなたもそうなのかしら?」

今日初めて、僕に話かけてきた。

『そうです。

僕も風夜が“浅利風夜”であるなら
女性だろうと男性だろうと関係ありません』

そう、性別なんて些細なことだ。

「わかったわ。

理解するのは難しいけど
認めることにするわ」

その後、続けて【風夜の
幸福(しあわせ)一番だもの】
と言った。

「風夜のこと、よろしくね」

まだ、戸惑い気味だけど認めてもらえてよかった。

『はい(๑^ ^๑)』

とりあえず、風夜の両親
(主に母親)に認めてもらえてよかった。

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