第八話💓プロポーズは突然に
『春弥、突然で申し訳ないのですが
こちらを受け取って
頂けないでしょうか……
そして、こっちを嵌めて欲しいのです』
お泊まりから数日後、
直接、家に呼ばれて行ってみると
風夜は僕の前に
二つのジュエリーボックスを置いた。
促されて開けてみれば
そこには、 僕の誕生石が嵌まった
シンプルなシルバーリングと
風夜の誕生石が嵌まった
同じくシンプルなシルバーリングが。
『ぇ⁉』
本当に突然で
三度ほどまばたきをしてしまった。
『私はあなたと一生一緒に
いたいと思っています。
どうか、受け取ってください』
向かいに座っている風夜は
下げた頭を上げずにいる。
答えなんて一つしかないのにねぇ。
『風夜、嵌めてくれる?』
ジュエリーボックスから指輪を抜き
左手を差し出すとやっと顔を上げた。
『勿論です‼』
僕から指輪を受け取り、
左手の薬指に嵌めてくれた。
『綺麗……』
トパーズが嵌まった指輪は
シンプルだけどシンプル過ぎず
サイズもぴったりだ。
僕もエメラルドが嵌まった指輪を
差し出された風夜の左手の薬指に嵌めた。
『では、改めて。
正式な結婚はできませんが
ずっと、私の隣にいてください』
嬉し過ぎて僕は立ち上がって
風夜を抱き締めた。
『当たり前だろう。
僕は風夜だけのものだし
風夜も僕だけのものだよ?』
『そうです。
私はあなただけのものですし
あなたは私だけのものです♬*゜』
婚姻届けも結婚式もないけど
二人でいられるだけで|幸福(しあわせだ》。
『提案なんですが
一緒に暮らしませんか?』
今日は何もかも突然だなぁ(苦笑)
『何かあったの?』
わりと慎重に物事を運ぶきらいのある
風夜がこんな突然にしかも
何かに焦っているような行動に
出るなんて何かあったに違いない。
『科学者仲間の一人に
既婚者の方がいるのですが
この間の研究の時に奥様と息子さんに
会えないのが寂しいと
おっしゃっていたんです……
その時、帰りを家で
待っていてくれる人がいることが
羨ましいと思ってしまったんです』
成程ね。 そういうことか。
これで合点がいった。
『僕も一緒に暮らしたいって
思ってたから嬉しいよ(๐•ω•๐)』
問題は幾つか残っているけど
その辺は追々解決していくしかない。
『どうしよっか?』
一緒に暮らすのはいいけど
僕が風夜のマンションに引っ越すか
風夜が僕のマンションに引っ越してくるか
はたまた、新しい物件を探すか……
僕も風夜もわりと書籍類が多い。
特に風夜は仕事関連の専門書も多いから
そう考えると、新しい物件を
探すのが賢明のような気がする。
『次の休みにでも
不動産屋に行きましょう』
風夜も同じ思いなら話は早い。
『そうしよう*♬೨』
僕は母さんにだけ
引っ越す旨をメールで伝えた。
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運良く被った休日に
僕達は近くの不動産屋に来た。
二人暮らしだけど
部屋数は多めの方がいい。
駅に程近い
マンションの五階に決まった。
家賃や水道光熱費は折半。
そして、引っ越し当日は
母さんが手伝いに来てくれるらしい。
目的は風夜に会いたいんだろうけど。
そのことを話したら
風夜は嬉しそうだった。