63.知らない刃
向こうの山で、巨大な銀色がうごいた。
ポルタから流れでる海水をせき止めていたダムのMCOが。
再びボルケーナ先輩の姿にかわっていく。
手のひらでポルタをすくいあげて、山をおりてくる。
もう海水は流れでなかった。
「パーフェクト朱墨は、装備を取りに行ってる。
ブロッサム・ニンジャは、捕まえたこん棒エンジェルスをつれてくるって」
目の前の崩れ、焼かれた街と引き換えにして、ね。
ブロッサムが歩いてくる。
ときどきしゃがみながら、道路をふさぐガレキをずらしながら。
「ハンターキラーの大砲は、完全に戦場を射程に入れたって。
スゴいや。
百万山の森から、射程60キロ」
今日、事件がおきて、唯一良かったことだよ。
「今日みたいな立ち上がりは、普段なら奇跡だよね。
今日の訓練のために、みんなスケジュールを合わせてくれたし。
ここに来なくても、それぞれのエリアで集まったり機材のチェックしたり、してたからね」
その通り。
運が良かっただけなんだ。
目の前には、新たな問題がある。
ブロッサムの後ろに続く人たち。
ハンターキラーたちがエニシング・キュア・キャプチャーを運んでくる。
解決しないと。
「安菜も見てよ」
ボンボニエールのような人型ロボットは、抱えてくる。
もう少し大きなキャプチャーを抱えるのは、オーバオックスって言う人型だよ。
見たらわかる軍用、装甲車もあるけど。
中にキャンプ用品を詰め込んだ、普通と言うには、ちょっとたくましい車、SUVも多いね。
これらの車は、キャプチャーを屋根に「ネチョッ」と張り付けて運んでた!
おどろいた。
ああいう使い方もあるんだ。
車列は、まだまだ続くよ。
「ああー!!! 」
巨人の叫びが、引き伸ばされる。
低く太く変えられる。
遠くへ高速で運ばれてるからだ。
「ああああっあー! 」
あっちは海だ。
光の刃たちに包まれて、なす術もなく。
光を持たない機影。
残された七星が、おりてきた。
両足と背中から、ジェットを吹きだして。
私たちの横の駐車場に。
その姿は、少しだけ、人の形からはなれていた。
だけど、部分によっては見慣れていた。
地球の戦闘機が、よく使う兵器だから。
両腕には機関砲ポット。
羽にはミサイルが並ぶ。
さらに巨大なミサイルを、なんと背負ってるのもいた。
戦闘機よりさらに大きな爆撃機が積むような、巡航ミサイルだよ!
その一人が、黒い大きな玉状のエネルギーを抱えていた。
表示によると、ポルタ社の社長の応隆さんだ。
「社長。それ、海に落ちたポルタですか? 」
指差して聴いてみた。
『そうだよ』
その声は、間違いなかった。
『ここに、こん棒エンジェルスを帰すための、ポルタを設置する! 』
駐車場に、下ろした。
続いておりてきたのは。
「え? なんで?」
ボルケーナ先輩だ。
その表情は、納得いかないようにも、おこってるようにも見えた。
あの、さっきまで戦ってた巨人は?
「とられちゃった。
リッチー副団長に」