62.花火じゃないんだ
同じ、空でドーンでも、花火大会とは違うんだ。
雨を振り乱し、巨人が手をバタつかせて、体をねじる。
ドーン
失われた下半身が上に。
そこから、黒い炎が噴火のように暴れでた。
「ああ!!! 」
叫びと爆音を上げて、巨人が加速する。
私たちの方へ!
怒りの形に口が裂けて、せまる!
カービンを向ける。
「ひっ! 」
安菜が、今さら短い悲鳴を上げた。
・・・・・・ムリもないかも。
戦いは、長引きすぎたかもしれない。
私にとっても。
ガン! と金属の衝突に似た音が聞こえた。
巨人が止まった。
「ひっ! ヒイィ!! 」
おびえる巨人が吹き飛ぶ音。
叫びは上に引き伸ばされて、低く聞こえた。
背中に、ボルケーナ先輩がしがみついていた。
「・・・・・・あれっぽっちの翼で、どうやって? 」
安菜、先輩に常識で見てはいけない。
「そんなの常識だよ!
・・・・・・あれ? 」
安菜の事を、おかしくおもわないでね。
先輩の行動は本業の神さまでも測定できないことがあるから。
上空が騒がしくなってきた。
灰色の影がジェットの音を重ねて。
あれは、宇宙製戦闘機の、七星の部隊だよ。
表示によると、12機いる。
チーム疾雷だ!
達美さんたちと同型サイボーグによる、ポルタ社の精鋭部隊!
あんなテストパイロットもやってるんだ。
先輩と巨人の戦いの場を、グルグル回り始めた。
もう、巨人に逃げ道はないね。
そのうち半分の6機が、すぼやく人型に変形した。
さっき達美さんと武志さんがして見せたように。
七星の手から、光りがのびた。
・・・・・・あの光は、なに?
赤、黄色、ピンクに青。
レーザー砲みたいに、まっすぐ飛んで行ってはいない。
一定の距離、長くて10メートルくらいで光は途切れている。
光のでどころは、手だったり、手にした長い棒の先だったり。
まるで。いえ、確実に剣や槍や薙刀みたい!
6つの機影が、一斉に巨人に襲いかかった!
真っ先に飛びかかったのは、・・・・・・トリコロールと言うやつ?
アニメの試作ロボットみたいな。
ヒーローを思わせるハデな色づき。
白を基調に、赤、青、黄色をバランスよく配置してる。
そのハデなロボの赤い剣が、真っ先に巨人にダメージを与えた。
差し向けられた2本のムチを、あっさり切り裂いた!
右手に槍をもった七星が、続いた。
左腕に丸く大きな青い渦巻き。
きっと盾だよ。
さらに短剣二刀流、反りのある刀、薙刀をもつ戦士たちが、四方から襲いかかる!
長い柄に大きな三ヶ月型の刃をもつのは、ハルマードってやつだね。
こんな戦いかた、初めて見た!
『お、お姉ちゃん』
みつきも、上空の事をボーゼンと見て、今戻ったみたいだ。
『手りゅう弾もあげるよ』
ありがたい!
みつきがさしだしたコンテナを、ウイークエンダーの両手首で受けとる。
ガラガラと落ちてくる手りゅう弾が、手首の穴に吸い込まれていった。
これで、応急の補給はすんだ。
空の方は気になるけど。
訓練道理なら、私たちの仕事は地上部隊の見守りだからね。
『安菜、怖いなら脱出する? 』
達美さんが申しでた。
「お断りします」
安菜に、ハッキリ言う心が戻ったみたいだ。
「はーちゃん、破滅の鎧は、私と契約して動いてます。
私だけはなれたら、トラップだかなんだかが働く可能性があります」
『その辺は、徹底的にかチェックしてるはずだよ』
「だから、です。
もしも事態が収まっても、私たちがひどい目にあったときは、こん棒エンジェルスへの処罰をお願いします。
ウソつきとして」
『それは、重大だね。了解』
珍しいかも。
達美さんが、他人に圧倒されてる!
「それにしても・・・・・・。
メールがいっぱいくるようになったね」
安菜。
指示が来るってことは、みんなボルケーナ先輩だと、見守ってもムダだと思ってるんじゃない?
「それはそうか。
えっと、海側に展開したこん棒エンジェルスは、制圧したみたい。
それと、もといた世界へ帰すので、向こうの世界とも交渉済み。
制圧した敵は、もう帰したって」
スゴいや。
早いもんだね。
「のこりは、私たちの回りだけ。
ここと、向こうの山のふもとで、引き渡しを行うって」
恐怖は去った、のかな?
かわりに、急かすような。
こんなこと早く終わらせなくては、と言う気持ちになる。
無事に、みんなで帰りたい・・・・・・。