魂呼び子.6
内部に人が
そこに
ちょっと
「あいつは手を貸す気ないって。呼ばなきゃよかった」
「え、だけど……」
後始末はすると耳にしてからさほどもないので、アントイーヴが彼のほうをふりあおぎ、その視界にセレグレーシュを見た。
構成の中枢を、まじっと見おろしたままのセレグレーシュが、いっぽうへ声をなげる。
〔プルーデ…――…。……君、ちょっと来て〕
うっかり闇人の名を口にしてしまいそうになって、にわかに
そこに横たわっていた距離を
彼女にすれば、《真名》に基づいてに自分を召喚した相手が自分の名を把握していることなど
〔なに?〕
〔うん……。この中心にいるもの、どっちを向いてるか君なら見えるかと思って…〕
〔見えるのは外側の円だけよ。波打つレースみたいな…――ナミナミギザギザアミアミの……。中まで見えるわけない〕
〔そうなの?〕
〔そうよ。
法印構成が途切れるあたりを流し見て、不満そうにうち明けた彼女――プルーデンスの視線が、最終的には非難の色をおびて、いっぽうに投げられた。
そのあたりにいたアントイーヴが苦笑している。
(そうか。収縮形態の表面……組みこまれている範囲の
女
そうしながら、ぐるりと法印全体に
ともなく。
眉を寄せ、頬をふくらませたセレグレーシュは、ぷいっと相手から顔を
対する
(やっぱり喧嘩してる…)
ふたりの不和を目撃して思ったのは、アントイーヴである。
「位置関係がわかれば、いいのか?」
セレグレーシュが地面上の
「うん。姿勢は、かなり克明におぼえているんだ。向いてる方位さえわかれば、足の位置、メルのいた場所が、だいたい
「それで、どうするんだ?」
「向いてる方向がわかったら、解放とどうじに獣人の足もと(を)固めて…。獣人が状況を理解するまえに〝メルをとりもどせれば〟と考えている。
足場の拘束を上へ……網で
拘束がメルにおよぶ前に離さないと
でも実際は、この束縛に獣人がどんな反応をみせるかわからないんだ」
〔手伝う気がないならあの子、なにをしにきたの?〕
かたわらでは女
セレグレーシュは《
チリ……ン……リン…
そこにあるのは霊的な響きをしめす音文字だ。
内に秘められているので感覚的なものだが、その形から表面的な響きが予測できた。
必ずしも必要とは思えない鎮魂めいた……中にいる対象をはじめ、それを耳にする者の気を反《そ》らし、なだめ癒すことを目的としてるような優しい旋律だった。
「暗かったしな……。君も思いだして」
〔わたし、おぼえていないわ。メルとあいつしか見てなかったもの〕
「麻痺させることも考えたけど、なにが効果的に働くかは個体によって違う。
あの獣人は、その方面の耐性が高そうだったし…――どうするにしても、位置……軸と立ちあげる精密な方向、角度、配分がわからなければへたに使えない。
法具に選ばせて瞬時に基軸変更するには、
影響をメルまでおよぼしたくないんだけど……」
煮え切らない表情で事情を告げるアントイーヴの視点が、少し先の地面——構成の中心となる部分におとされる。
(…――確認してからだと組みあげに最短でも三、四秒……。不測の事態にあっては、その限りでもなくなってしまう。持ってきた道具で足りるとも限らない。だけど結局…そうするしかないのかな……)
思案に沈むアントイーヴのかたわら。
よそ見していたセレグレーシュが構成の中央に注意をもどした。
まだ見ているようで、見てはいない。
その瞳の集合点……ピントは白い小石のように感じとれる法印のコア――《
「もしかしたらオレ、見えるかもしれない。理由は聞くなよ? オレ自身もわかっちゃいないんだ。見えないかもしれないんだし…――」
事の後でそのあたりを追究されないよう前置きしたところで、セレグレーシュは、すっと息を吸いこんだ。
言葉の意味を問い質したそうにしているふたり――いっぽうの女性は状況がよくのみ込めていないようなので、
(
そして恐いものがあるように構成の中枢を見おろし、問題となっているポイントを視野に捕捉した彼は、ぽつりと呟いたのだ。
「…地面を…