愁傷 そして…….3
〔ここで
鋭くも冷めた表情とは裏腹に、やたら
セレグレーシュを包囲していた炎のカーテンが
ぐるりと周囲の地面から立ちのぼった黒煙が、セレグレーシュを
いっぽうでは、不意をつくようなタイミングで
スュサッ……。
それは鋭く空を裂くもの——
どこからともなく出現すると瞬間的に渦を巻き、四方八方から少年
〔…――っ〕
これと大きな動作をみせることもなく、その部分を視覚でとらえるだけの所作だったが……。
水の刃が自身に届くより先に、ことごとくうち
さらには霧のようになるまでばらばらにした水の粒子を白く
じゅぅっという、不穏な音を聞きつけたセレグレーシュが、その方面を正視すると、液体が熱に散らされ気体に変化する音がしたあたり。白い光にさらされた蒸気が、もくもくと立ち昇っていた。
セレグレーシュには、そこに立っている
光るもやの中にいる
距離にして、七〇メートルほども離れているだろうか……
それはいま、うっすらと伏目かげんにまぶたを
こちらへと駆けだして
彼がセレグレーシュと女
そんな
夜闇の中に太陽を
あやうくも思える光景を目撃したセレグレーシュは、熱の残存する地面を蹴って、走りだしていた。
光る
とり乱すでもなく、しっかり立っているようでもあったが無事なのだろうかと。
暗くて、ほとんど視界がきかないので、いっそう不安になる。
セレグレーシュの動きに
そんなふうに駆けて行く彼の左側面――わずかに距離をおいたあたりで。
いずこからともなく生じたまっさおな
セレグレーシュに襲いかかりそうに見えたその
あたりが一瞬にして青白く染まる。
まばゆい光がふりそそぐなか。
光源でもあるその青白い
真夜中の闇をはらって、
頭上をぐるりとあおぎ見たセレグレーシュは見なれない光景に、あぜんと口をあいた。
ついさっきまで彼を包囲していたものとおなじ
セレグレーシュが天上にゆれるかがやきを見あげていると、それは発生している根もとの方から薄れはじめ、前後左右から勢いを失うように縮小して消失した。
とたんに、あたりが暗くなる。
強い光を見た両目に白っぽい
経験から闇人や妖威に関わると、非常識な現象を見るという認識はある。
なにがどうだったのか……。
彼は理解できていなかったし、理解しようとも思わなかった。
とにもかくにも、それと定め見た少年のもとをめざす。
暗がりに立っていた相手に、あやうく衝突しそうになりながら彼は足をとめた。
ほんの短い距離で息がきれたが、現実にほんろうされ目と感覚が冴えきっているセレグレーシュにそこまで疲労している自覚はない。
彼が自分についてきていた黒い玉をひとつ持ちなおすと、つかず離れず
そこには、セレグレーシュの心力を活力として空間に作用する法具と呼ばれるものの不思議な力関係があった。
〔もつかどうか……ぅくほっ…。わからな……けど…、なか、入るか?〕
〔いや。自己防衛して休んでいてくれれば、
〔……そうか?〕
過去には接触を
ほっとしながらセレグレーシュは、変に
次いで後ろに残してきた女
強い光を見た直後なので、
視線を向けたポイントは、なかば以上が直感——
〔おい、君も来いよ〕
〔あれを入れてはならない〕
〔…。なんで?〕
〔
〔え……、でも…〕
女
同質の炎を彼女が
けれども今は、はた迷惑な妖威が気流で圧倒し、彼女が生みだした炎を
大気の流動は、もう髪の毛の先にも感じられないのだけれども……。
いったん法印を形成する手を