58.噂で襲われた私
「美しい像だね」
たしかに。
ボルケーナ先輩の体は液体なんだ。
だからいつも、たれたり曲がったりする。
そこからもっとも美しい姿を見つけ出して、形にするその技術は素晴らしいと思う。
形が変わらないのは、MCO自身が旗印としたからかな。
「うらやましい?」
そう言われて、考えてみた。
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まず、ウイークエンダーを巨大像化させてみる。
・・・・・・形が変わらないなら、なれたやり方で動かせる・・・・・・。
いや、ありえない。
大きさが変わるだけで動きとか、傾くバランスとかが変わってしまう。
私自身は・・・・・・恥ずかしい!
何か好きなものなら。
色も変えれるし。
超巨大ショートケーキ!
白いクリームにおおわれた丘のように。
抱えるほどもあるイチゴ。
それがグルグル回転しながら、敵をけちらすの。
安菜に不思議なドレスを着てもらうのはどうだろう。
黄色が似合うかな。
動くシッポも良いかも。
それで、悪党どもを素手で、足りないなら超振動でバッタバッタとなぎ倒す!
このどのアイデアも、ふざけたモノではない。
これをやって出世した異能力者は、いるんだから。
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「やめとこう。
人が死なないと、できない芸術なんて・・・・・・」
滝の下、朱墨ちゃんの小学校も見えた。
なんとか、海水の濁流からは無事だったよ。
近くに、パーフェクト朱墨とブロッサム・ニンジャがいる。
まわりは自分より小さなこん棒エンジェルス。
パーフェクト朱墨は、たくさんの黒い炎をぶつけられていた。
その翼は全て下ろしてた。
こきざみに立つ位置や向きをかえて、降りしきる攻撃に耐えてる。
ブロッサムが、かばってる。
足で踏みつぶしたり、殴り付けて。
どっちも鋭く、素早い動き。
「ねえ。あんな動きをする機体じゃないでしょ? 」
「ええ。もちろん」
パーフェクト朱墨の翼の中が、チラリと見えた。
「バスを抱えてる! 」
たぶんスクールバス。
「あれをかばってるんだ! 」
ブロッサムは?!
砲撃じゃ、バスや付近に被害がでると思ってるんだ!
ほとんど巨大な大砲として作られたブロッサムの両腕。
手はあるけど、それほど器用じゃない。
その手に、握り込めるサイズのこん棒エンジェルスをつかんで、ぶつけてた。
街に光がある。
電気じゃない。
赤やオレンジの炎は、こん棒エンジェルスが起こしたもの。
家のすぐ上に、頭が見えた。
それも、たくさん。
体を隠していた家が、コナゴナになって黒い炎とまじりあい、飛び散った。
こん棒を休みなく、まわりにあるモノに叩きつけてる!
さっき、朱墨ちゃんの知りいのハンターキラーが言ってた。
こん棒エンジェルスは、私たちに試練を与え、私たちはそれを乗り越えなければならない。
だけど、これに意味なんか見つけれない。
あらわれたときは、私たちよりも消防を。
いまは、家も、店も、自動車も。
順番に弱いものを、叩きつぶすとしか見えない!
そのこん棒エンジェルスが、ハンターキラーの防弾で倒れた。
だけど、また立ち上がる。
「キックした巨人が動いてる!」
安菜が叫んだ。
「こっちを見てる! 」
本当だ。
まっすぐ、私に何かしようという、意思をもって。
「お前があ! 噂のウイークエンダー・ラビットだなぁ!!」
吠えた。
雷の音のように、装甲を越える音として。
「言え! 閻魔 文華さまはどこだ! 」
私たちの方へ、かけだした!
「どこへ隠した?! 」
怒りの声に、身がすくむ。
震えがわき上がる。
だけど、「えいっ!」
まずは、はずしたキューポラを投げつける!
巨人の頭に、正面から叩きつけることができた!
その後ろの山で、巨大な稲妻が落ちた。
それが消えない。
落ちつづけてる?
違った。
稲妻が落ちつづけてるのは、デコとペタの、双頭のワシだ。
下には、巨人が山を登るとき援護射撃した部隊がいる。
デコとペタのワシは、自分たちの体を避雷針にしたんだ。
そのまま敵を全身で焼き尽くしていく!
あの2人がくれたチャンス。
まずは、近いディメンションと合流する!
助け出したら、ブロッサムたちも助けて、巨大戦力を確保する!
「安菜! 」
川から土手へ走りだす。
足に引っ掛かった電線が、あっというまに電柱を引き倒しながら切れた。
「何?! 」
巨人の立ち上がりは速かった。
仲間のことは、もうあきらめたのかもしれない。
「この事は許されるかもしれない。
だけど忘れないで」
ウイークエンダーの両手から、あるだけの手りゅう弾を川にまいた。
巨人のまわりで爆発する。
川の水も巻き込んだ衝撃で、打ちのめす!
「閻魔 文華さまは、どこだぁ!! 」
衝撃は、回りの建物も巻き込んだ。
ガラスが割れ、壁に穴が空くのが見えた。
「安菜! モニターに使える情報はないの!? 」
「ダメだよ! まだ内部の診断?が終わらない! 」
手りゅう弾の爆発は続いてる。
その燃える水しぶきでさえ、巨人を止められなかった。
砲撃を!
振り返ろうとした。
「火器コンテナは、動かせません。
発砲そのものと、コンテナの切り離しは可能です」
男性の声が聞こえた。
すぐ後ろから。
振り返るのはやめる。
走りつづける。
でも、ついに追いつかれた。
背中のコンテナを捕まれた!
足を止められる前に、切り離す!
走らなきゃ、終わりだ!
「空挺ユニットは、使用可能です」
また、あの声が。
モニターの表示は、まだノイズが走る。
聞こえた声を信じた。
飛行ユニットが、動く。
ウイークエンダーの機体は、浮かんだ!
巨人は、私たちからうばったコンテナを振り回しながら追ってくる。
その捕獲より速く私たちは空に浮かんだ。
「はーちゃん? 」
気づいたのは、安菜だ。
「はい。私は破滅の鎧です」
私を逃がしてくれた、その声は。