暗 影.4
〔夕食の
女
〔もう
〔暗くなってきたって言ったのよ。陽が落ちても進むつもりなの?〕
暮れゆく通りは、まさに街と宿場のはざま…――中間点もまだ先で、連れの女性が指摘したように、店どころか小屋も人家も見あたらない。
道の両脇に
それなりに密でも、採集や伐採、狩猟やなんやらで、そこそこ人の出入りがあるのだろう。
〔
女
二頭の手綱を手にしたセレグレーシュが森の中に入ってゆくのにならう。
背の高い同種類の木立に
若枝の芽を養いながらも障害物といえるようなものはない。
地盤が岩でもないのに、ぽっかりと、そこそこの空間が維持されている。
もしかしたらそこは、人が目をつけてよく
いまも利用されているのかは不明だが、少なくとも最近そのあたりで火を
ともあれ都合がいいので、利用させてもらうことにする。
〔ここに法印をむすぶ〕
〔なんのために?〕
〔風よけと虫よけと、身の安全目的〕
セレグレーシュが、ぱっと目についた石や落ちている枝を一定の
それは初歩的な構成を築くさい、誰もがなんとなくしてしまいがちな行動だ。
構築の
異物や起伏が多いと、
その半透明な玉は、厚みのある透明な
いささか反応が
さらに黒い天然磁石の球体が複数
〔その
〔なにをするの?〕
〔だから、法印をむすぶ〕
〔…。必要?〕
〔家の
〔それ……。
〔うん。防御結界の
植物の多い土地には、それに向いた
築いたことはなかったし、それを形にする公式も
彼がいま成そうとしている技で、この土地に見合った場を確保しようと
〔少しせまいけど、
〔あなたは中にいるの?〕
〔ん。出られないのも不便だし。人が来ると面倒だから、ご飯済ませたら寝る時まで(は)外すけど〕
嫌なら外にいなよ、と——そう続けようとしたところ、女
黒真珠のような光沢をはなつ天然磁石の玉は、全部で一九個。
磁力が内部に内包・強化されているので、心力の
こういった性質の改良・ねじ曲げは、法具であれば
ひとつひとつの大きさが、直径五〇ミリていどになるそれを、三個づつ手にとる。
彼が触れることで理力をおびた球形の法具は、その手を離れても、使い手と地面の中間をただよった。
〔なんのために法印を築くの?〕
〔
〔嫌よ。そんなもの作る気なの? あなたが食べなさいよ。わたしの視界の外でやってね。信じられない……気味の悪いひと…〕
いくぶんずれた反応が返ってきたが、セレグレーシュは、
〔そー
むかしはカビが生えようと、パンはパンで……。彼の命を支えてくれる大切な
だから、身体に悪そうなところをとりのぞいて食べていた。
スープに虫がまぎれこむと、入った虫に同情することもなく「なにをするんだ」という抗議的な意思か、「不運」「なんで、そこに来るかな…」「ひどいや」などという冷めた感想で見かぎり、いっしょに失われる
特定の屋根の下で、飢える心配もなく生活するようになって、軟弱に……いや、
セレグレーシュは、生真面目に思いかえしながら、手もとにある
最後に残されたひとつが、ほうり投げたようにも見えなかったのに、すいすいと高みをめざして上昇をはじめる。
天に一、中空に六、地表すれすれに十二…――。
セレグレーシュのまわりで、気まぐれにも思える
ふたりの足もとでは、なんら変わりなく雑草が緑の葉を広げているが、周辺の細い枝や
いっしょにその地面下(範囲の外(縁の外)まで寄せられた虫の類が、新たな居場所を求めて、ざわざわ
表層が掘り起こされたりしてはいないが、一定の深さ――三センチ程度
結果として、捕食者の
地面におりた玉石は、なかば地中に
大地の
立っているセレグレーシュのほぼ目線の高さに、ぐるりと浮かんでいる六つの玉は、地におりた十二の座と、
無色透明の立体障壁で……
基礎に使われた玉は、内から目を
天然の森林下に形成したので、かなり
――天と地を結ぶ