月流し.4
背後には旅立ちを前に、借りものの馬の手綱を手にしたふたりの姿がある。
家に戻ろうとしていたカフルレイリは、その行程も
「――講師。彼女が彼の審査に?」
「ぁあ、イーヴ。元気にやってるか? あれは、御本人の希望でな」
「彼女の……」
「ん、そう聞いている。補佐が入る話もあったが、
「いえ。ぼくは……」
「そうか」
カフルレイリは、ひとつ
「もう、半年近くなるか――。あの娘のような者を減らすためにも、
講師の
「講師。試験は、どこで行われるのです?」
「それを知っているのは、
アントイーヴは、相手の言葉も終わらぬうちから視線を転じ、離れていく馬影へ意識をはせた。
いちおう話に耳をかたむけてはいても、心ここにあらず……といったようすだ。
「…ロバじゃないんですね……」
「あぁ。あの女人の希望でな……。ヤクやポニーを出す案もあったが、
「《家》にみすぼらしいポニーもいないし、彼女に選ばせるのなら、おなじことです。起用条件として、無難な
「うん。まぁ、そうなんだが……。…――(
「老馬ならまだしも二頭も……」
「急な変更だったからな。彼のほうはいくらか旅慣れしているようだから、それもある種の
「
「
「…。そうですね……」
「それは気がかりだ。話してみろ」
「お
「言ってくれるな」
「背景さえなければ使えそうなので、利用できないのが残念です……」
🌐🌐🌐
〔先導してくれる? 馬をあつかったことはないの〕
桜色の唇からこぼれた声は、
青い外套をはおったその人は、すでに
〔どっちへゆくの?〕
〔南東。スカウオレジャよ〕
もしかしなくても、行き先を
思ったセレグレーシュだが、あえて聞き返すことはしなかった。
〔わかった〕
現地に到着するまでは、予行練習のようなもので……。
帰還するための行程を目で探るのはいいが、口や耳で試験の情報を収集してはいけないことになっている。
開始前の違反行動が減点の対象になるかは、審査官の心ひとつらしく、
「あの師範がつくと、現地に着く前からいちいち減点されて、マイナスから始まるからつらい」とか、「あの人は、ゆるいようでも油断大敵」だとか、誰が
いずれにせよ審査役は、あっちへ行く、こっちへ……と、
(なんだか、
女性――それも闇人とふたり。
ほかに同行者もなく試験に
口が軽く動いた審査官を左となりに。はじまる前から肩の荷がおりた気にもなる。
〔じゃあ、森をぬけて南の道に出るよ?〕
〔最終的に着くのなら、どうでもいいわ〕
(もしかして、今から試されてる? まさか、この人が
気のない返答の裏を
▽▽ 予 告 ▽▽
次回、第五章【暗影~あんえい~】に入ります。