38.安菜すごい!
安菜は、このとき黙っていた。
たじろぎもしなかった。
そして、はっきりと意味ある言葉を放つ。
「ではさっそく、質問したいことができました。
あなたの言った、こん棒にMCOを込めるという方法。
それを私たちの地球がほかの世界に広めたことはありません。
私たちは、それの出所を調べたいと思っています。
誰から教わったものですか?」
これまでより長い沈黙が、研究室を包んだ。
破滅の鎧さんは、ピクリとも動いてない。
だけど、なぜか恐怖に身を凍らせてるように見えた。
『……該当は、1件だけです』
しゃべった!
『ですが、それをあなた方に明かすことは、つまり尋問に成功したということですね?
こん棒にこめられたMCOを送られるということは、あなたたちにとって疎まれることなのですね?』
そう、そのとうり。
MCOは、たしかに利用価値があると、私は発表した。
でも、その運ばれ方が問題なの。
突然、鉄や木の棒が空から落とされるんだよ。
量産できるエニシング・キュア・キャプチャーでなら、安全に確保できるけど、それがないところは?
利用できるなら、したい。
でも、危険は危険なんだ。
こん棒の出所がわかるなら、知りたい。
『それは明かせません』
無感情な声。
いえ、あれだけボルケーナ先輩と笑いあってたから?
それはないか。
『私は守るべき世界があります。
それに、私には私をあなた方に送り届ける任務があります』
命がけの任務を語ってる。
その割には熱意?
そうだ、熱意がない。
『それができず、破壊されるようなリスクは犯せません』
……それは、そうだけど。
私はムカついた。
これは、安菜にどうこうできるもんじゃない。
誰かに助けてもらおうかな……。
「いいえ。あなたを破壊する予定はない!」
安菜! 言い切った!
「むしろ、あなたが明かしてくれる事実によって、事態を好転してくれることを期待している。
あなたの世界も。
あなたは、思いつく限りのリスクと、利益を考えて答えをだせばいい」
……たしかに、今のところ予定はないけど、これからできるかもしれないんだよ?!
「あなたは私と話すことは、あまり興味がないような気がする。
むしろ、この世界で通用する肩書きを持つ人と関りたいと思ってるのではないですか?」
それでも、安菜は言った。
わかってたとは思う。
いざとなったら、私が何が何でも守るけど、ほんとに、守れるのかな?!
『話しましょう。
安菜殿下、勇気をありがとう』
・・・・・・通じた。
『私を地球に送りだしたのは、異世界からの来訪者、閻魔 文華という魔女です。
魔術学園の元教師ですが、謀略によって追放されたと聞きました。
そして、私の世界の最高位の権力者より位は上だと』
「文華?」
そう、口から漏らしたのはボルケーナ先輩だった。
「ええ。知ってます。
そして、その人は裏切り者です」