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5話 フィクサー

 次の仕事は、都市開発を仕切っているフィクサーから金を巻き上げて、計画を断念させるというものだった。

 所長からの情報によると、このフィクサー、計画を実行するために、あと30億円が必要とのことで、これを餌に、詐欺を仕掛けるというシナリオで、今回は、男性のパートナーと一緒に仕事をすることになった。

 まず、私に与えられたのは、投資コンサルとしてバリバリのキャリアウーマンだった。まず、事業計画書をこのフィクサーに持ち込んだ。

「初めまして。当社の社長からご案内があったと思いますが、耳寄りの投資話しがあって、本日、ご説明にあがりました。」
「聞いているけど、本当に儲かるの?」
「まず、お聞きください。最近、闇バイトがニュースを騒がしていますが、闇バイトを運営しているボスが何人もいます。この1人が、他のビジネスをしたいものの、人手が足りないので、この闇バイトの運営を誰かに売りたいということなんです。もちろん、ニュースで言っているように、元締めが明らかにはならない仕組みで、捕まるのは売り子たちだけですし、ニュースではあまり明らかになっていませんが、相当の金額を獲得できています。その額はこのグラフの通りです。」
「俺も、投資する以上、確実なリターンを約束してほしいわけ。どれだけだと思えばいいの?」
「このビジネスは旬もあるので、2年間で撤退することを前提に収支計画を作っていますが、10億投資いただいて、50億円のリターンとなっています。その具体的なパイプラインは、狙う老人宅とか具体名はマスクしていますが、この表の通りで、かなり現実味のある数字となっています。」
「結局、10億円が2年で50億円か。」
「今日は、顔を見せられませんが、その元締めがPCでお話しさせていただきます。」
「こんにちわ。あなたの名前は、ときどき耳にするので、あなたを信用しての、良い話しと思っていますが、どうですか?」
「まあ、悪くないな。疑うわけじゃないけど、こちらの筋からも、あなたの組織を調べさせてもらうよ。話しはそれからだ。」

 それから1週間ぐらい経って、そのフィクサーから呼び出しの連絡があった。

「お嬢さん、調べたんだけど、先日、聞いた組織はなかったって。俺を騙そうとしたんだな。」

 そういうと、暴力団風の男性5人がドアから入ってきて、ほのかを囲んだ。

「意味がわかりません。私は、嘘はつきませんし、意味のある提案しかしません。嘘であれば、何をされても結構ですが、そんなこと言われるのは、本当に心外です。謝ってください。」
「わかった、わかった。そこまで言い切るなら、本当なんだな。調べたけど、それらしき組織の実態はあったものの、それ以上はわからなかった。でも、お嬢さんが、ビビらずにそこまでいうなら、信用してやろう。いつ、金を渡せば、その組織を引き渡してくれるんだ?」
「信用していただき、ありがとうございます。では、今週の金曜日の17時に帝都ホテルの305号室で、お待ちしています。こちらは、先日、お話しした元締めと、組織を渡した後に事業をリードする筆頭リーダー、私の3人でお伺いします。お金は10億、現金でお願いします。こちらからは、筆頭リーダーをご紹介して、組織図、ターゲット、それぞれの金額、実行計画をお伝えし、今後のビジネスの進め方をすり合わせさせていただきます。それでいいでしょうか。」
「もちろんだ。ただ、騙したら、一生かかっても探して殺すからな。」
「ご心配に及びません。」

 全く不安げな様子を示すことなく、ほのかは、堂々と返事をした。予定の日に、ほのかは同席したが、男性2人が全て対応し、10億円を獲得できた。ほのかは、このグループって、すごいと感激だった。

 その後、そんな闇バイト組織はないことがわかり、フィクサーは詐欺で10億も奪われ、金の切れ目が縁の切れ目という言葉通り、業界からそっぽを向かれ、力を全て失った。それでも、恨みで、3人を探し続けた。

 男性陣はどうするかわからないけど、私は、全く顔が変わってしまうように、ばっちりメークしたし、胸パットとか、お尻も厚みを出すもの履いてスタイルを全く変えたし、声色も変えたから、今後もバレないはず。私の変身力、侮らないでよね。でも、これって、快感だわ。悪い人を懲らしめているのだから。

 数日後、道路を歩いていると、突然、声が聞こえた。
「危ない、止まって。お兄ちゃん。」

 なんだったんだろうと呆然としていたが、その後すぐに、マンションの上から植木鉢が落ちてきて、このまま歩いていたら、頭に衝突して死んでいたかもしれなかった。

 さっきのは、なんだったのかしら。守護霊? でもお兄ちゃんって何? わからないことばかりだが、その場はわからずじまいで終わり、どうしようもなかった。

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