6話 北朝鮮
次の仕事は、北朝鮮に、原子力開発の技術を移転しようとしている技術者を引き止めることだった。今回は、男性社員がメインで、私は、補完的に、この技術者の奥さんを、こちら側に引き留める役だ。
私は、北朝鮮から脱北してきた朝鮮人。いかに北朝鮮はひどい政治を行っていて、これ以上、力をつけさせるのは、世界にとっても、北朝鮮の人達ににとって大変なことになる。それを旦那さんは、後押ししようとしている。そんなんでいいのって、奥様とお子さんに泣きながら訴えた。
外国人としての日本語イントネーションは少し難しかったけど、私のこれまでの技術からすれば問題はない。それより、脱北者感を出すために、げっそり痩せることにしたけど、これは大変だった。毎日、食べたいものも控えてダイエット。演技って、大変だわ。
奥様は、最初は、誰か知らない人で信用できないと言っていたけど、私から、旦那さんと北朝鮮とのメールのやりとりを提供し、私は日本の公安からの依頼で来てると言ったら、調べてみると言って、旦那さんと話した様子。
女同士の相談だって言って、何度も話していたら、お子さんと聞いてくれるようになった。お子さんも、そんなお父さん、嫌いだって言ってくれた。毎晩、塩水で目をつけていたら、目の周りが腫れてきて、涙にくれた毎日を演出できた。そんな姿を奥さんは本当に同情してくれたわ。年末年始の休みだったから、学校にはバレずにすんだけど。
男性陣も頑張ってくれて、奥さんからも説得してくれて、技術者は、行かないように心変わりをしてくれた。やっと成功したと安心したけど、そんなに簡単じゃなかった。北朝鮮は、奥さんと子供を誘拐し、彼を脅した。
これからが腕の見せ所ね。こんな時を想定して、私は、日ごろから私の体に依存症になっている暴力団員を数人用意しているの。こういう男を数人飼っておくことは、私の仕事には役立つ。男って、本当にばかな生き物で、体を使えば、いくらでも奴隷になるわ。本当に、知能レベルが低い動物って感じね。
キャバクラが多い街頭で、若い暴力団員らしき人を見つけると、お兄いさん、今日寂しいから飲みに行かないと誘って、ホテルに誘う。そして、近づいたと思ったら、距離を置いてしばらく無視。その後、また誘ってベタベタとし、また距離を置く。こんなことを繰り返していると、会ってくれ、会ってくれと私に依存症になる。簡単だわ。
もちろん、いつでも別れられるように、メークとか、服装とかに注意して、全く別人として行動しないと。後で、逆に脅されるようになったら本末転倒だもの。服装は、キャバクラ嬢らしく、タイトなワンピースで、腰ぐらいまである金髪のウィッグをかぶるという感じね。寝るときに、ウィッグを外して、こんな姿見せるのはあなただけと伝えるの。下着も、透け透けなのが効果があったわ。
ところで、その暴力団員に、私と別れたくなかったら、言っていること聞いてと言ったら、言いなりだった。北朝鮮の人を捕まえ、奥さんと子供を返すよう依頼した。
その暴力団員は、北朝鮮の本部に突入し、命知らずな行動で、奥さんと子供を救った。さらに、団員を使って、北朝鮮のリーダーに、この件は諦めよと迫り、合意を取り付けた。どうも、そのリーダーの指を3本ぐらい切ったらしいけど。
今回は、私の体を使ったけど、それが成功に繋がったので、やりがいがあったわ。私って、本当に優秀なの。