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1話 なんじゃ、こりゃ?

 だいぶ明るくなって、鳥の囀りも聞こえてきたが、勝己は、まだベットで寝たい気分だった。そこで、寝返りをした時に違和感を感じた。

[あれ、なんか胸が引っ張られる。胸に何かついてる? なんだこれ、なんか大きい。え〜。あれ、これって女の胸みたい。でも、そんなことはないよな。夢見てる? 下はさすがに、あれ下もない。あれ、あれ? なんだ?]

 ベットから飛び上がった勝己は鏡の前に立って、着ていたシャツを脱いだ。
[なんだー、これは? 女だ。え、俺??? なんだ、なんだ? そして、この声、アニメキャラみたいで変な声。 でも、どうして? まず、俺は誰なんだ? まず、このスマートフォン、顔認証できるか? あできた。今日は、2023年4月3日、ということは、確か昨日が2日だったから今日で間違いない。俺が女になっただけ? 俺は誰だ? ところで、ここはどこだ?]

 勝己は、何が何だか分からないでぐるぐる、その場を回っていたが、少し冷静になり、まず、周りのバックとか、何か分かるものをごそごそと探した。そこで、分かってきたことは、自分が糸井 彩ということ、2005年2月20日生まれの18歳で、愛媛から、昨晩、東京にある清和女子大の寮にきて、9日が始業式であることだった。

[まず、何をすればいいんだ。この大きい胸、なんか動いて邪魔だな。そういえば、ブラジャーがあったから、それを付けてみたら動かないのかな。えーと、こんな感じで、えいえい、少し寄せればいいのかな。意外と、締め付けられている感じで窮屈だな。女って、こんな面倒なものいつも付けてるのか? さて、何からするか。男性と女性と違うことは何だ? トイレ、それはまだいいから、次は? 化粧だ。すっぴんで外とか出たら、逆に目立つしな。どすればいい?]

 さっき探していた時に、化粧ポーチがあったので、それを持ってきて、まず、YouTubeで化粧について調べてみた。

[化粧って、メークっていうんだ。初心者メーク徹底解説という動画を見てみたけど、疲れた。結局、よく分からない。詳しくは今晩にもう少しゆっくり見て、リップだけ塗って、少し、食べ物とか買い出しに行こう。その前にトイレ。]

 勝己は、恐る恐る、廊下に出て共同トイレに行ってみた。今日は、まだ寮に来ている人は少ないようで、廊下も空いていた。

「あら、こんにちわ。1年生かな。私、2年生だけど、よろしくね〜。」
「こちらこそ・・・」

[先輩らしき人が、手を振って通り過ぎていったけど、シャツだけで、下とかパンツだけで廊下歩いている? こんなもん? 春休みで人がないないから? 女って、人が見ていないと、そんなんになっちゃうの? それはいいとして、えーとトイレはここだけど。立ちションはできないよな。えーと座ったけど、これから、どうなるの? あれ、チョロチョロ出てきた。こんなところから出るんだ。なんか、出てくるところがびちょびちょという感じで、方向が定まらないけど、あ、ジョーって出てきた。こんな感じね。でも、トイレットペーパーで拭かないとダメだ。なんかグロテスクっていうか、変な感じ。こんな風なんだ。]

 お財布を見ると5万円入っていて、勝己は買い物に出かけることにした。さすがにスカートは恥ずかしかったので、まずは長袖シャツと、薄手のスェットのようなパンツをはいて、リップだけ塗って、外を歩いてみた。

[結構、緊張するな。なんか、女性の服って、軽いからか、よく分からないけど、着ていない感じで、見られているっていうか、気にしすぎかな。さて、スーパーに着いたけど、まず、寮の食堂は8日からと書いてあったから、食事とかかな。部屋に冷蔵庫と、食堂に湯沸かし器はあったから、カップラーメンとか、パンとか、お茶とか買っていこう。]

 部屋に戻ってきた勝己は、部屋にあった服を一通り着てみた。
[この服、どう着ればいいんだ。手をここに入れて、あれ、なんか着れない。あ、こうすればいいんだ。スカートって、どっちが前だ? こんなに短いの、電車で座ったら見えちゃうな。]

 夜中まで、ブラの付け方とか、髪型とか、かなりの時間を使って情報収集をして、まあ、なんとか明日以降やっていける気になったのが深夜。

[でも、どうして、こんなになっちゃったのかな? 明日、俺の家に行ってみよう。] 

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