【三十二】スクリーニング
翌日は、登校日だった。助手をしている場合、高等部への通学は絶対ではないのだが、月に一度のスクリーニングと、テスト期間は、登校が義務づけられている。
もっともこれも、事件が入ればそちらが優先されるのだが。
今は夏休みだが、スクリーニングは変わらずに行われている。
主に夏期講習や事件で通学できなかった場合の補講などがなされている。
久しぶりに学校へと行き、僕は椅子を引いた。
すると隣の席の日向が咳払いをした。
「おはよう、朝倉」
「おはよう」
「ねぇ――それはそうと、山縣ってどうなの? 噂の天才高校生探偵は、やっぱりすごい?」
「えっ……う、うん。山縣は、なんていうか隙もないし、完璧だよ」
これは事実だ。
ただ最近では、僕にも少しずつ料理や洗濯を任せてくれるようになってきたが、基本的に山縣は、全部自分でやっているし、僕の事を足手まといだと口にする。任せてくれるといっても、料理は食べてくれないことも多々あるし、洗濯に関しては、別々にするようになったというのが、正しいといえる。
実際山縣を前にすると、『完璧』というその言葉は正しいとしか評せない。
僕が足手まといだというのも否定できない。
これは僕の自己評価が低いというわけではなく、客観的な事実だ。
「御堂が、山縣の事ばっかり気にしてるからさ」
「え?」
確か日向の運命の探偵だったなと思い出しながら、僕は首を傾げた。
「山階学園で同じクラスみたいなんだけど、山縣は事件に引っ張りだこだから全然学校に来ないみたいだね。御堂はAランクになったばかりなんだけど、やっぱり宿命のライバルは、山縣だって思ってるみたい」
「宿命のライバル……」
「一度、朝倉にも会いたいって話してたんだけど、暇な日、ない? 助手として、セッティングしておこうかとは思う」
日向が若干不機嫌そうに言った。僕はスマホのスケジュールを確認する。
「水曜か土曜の午後なら」
「じゃあ水曜は? あと、俺も山縣に会ってみたいから、君の家でいい?」
「い、いいけど……山縣がいるかは分からない」
「分からない? 助手なのに?」
「……そ、その……うん。ごめん」
怪訝そうな顔をしてから、日向が頷いた。