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第十二話 散策


 見る物すべてが珍しいのか、ミアは周りを見ては、ミルに質問をしている。

 ミルも嬉しそうに、ミアの手を握りながら、説明を行っている。俺から少しだけ前を歩く形になっていて、俺には二人の会話が聞こえない。

「あるじ!」

 ミアが、後ろを振り返って俺を見た。

「どうした?」

「ミルお姉ちゃんと、あるじは”ふうふ”なの?」

「ん?ミトナルさん?」

 ミルを見ると、視線を逸らした。
 レオが目線をそらすという器用な真似をしている。

「レオ!」

”ワフ・・・”

 レオは、ミルを見つめる。
 やはり元凶は、ミルのようだ。

「あのね。あるじ。ミルお姉ちゃんが教えてくれた!」

「ミア!」「ミア。なんて、教えられたの?」

「えぇとね・・・」

 まぁ許容範囲かな?
 ミルは、言い訳を始めているけど、どうやら、ミアが街中に居る夫婦を見つけて、俺とミルが”ふうふ”なのか聞いたようだ。ミルは、当然のように”ふうふ”だと答えた。

「そうか、俺とミルが”ふうふ”か?」

「そう!」

「ミアは、”ふうふ”にみえる?」

「うーん。わからない。でも、あるじとミルお姉ちゃんは一緒がいい!」

 子供の素直な意見だ。聞いておこう。
 ミルに手を差し出す。ミルが握ろうとすると、ミアがインターセプトする勢いで、俺の手を握る。どうやら、俺とミルの間に入りたいようだ。

 丁度、少しだけ前を歩く家族が子供を真ん中にして歩いている。
 あんな感じにしたいようだ。ニコニコ顔のミアを見ると、ミルも文句が言えないようだ。

 立ち寄った道具屋で、値段は高かったが、自動調整機能付きの腕輪が見つかった。頼んだら、テイマーの意匠を刻んでくれた。なんでも、同じような依頼を受けたことがあると言っていた。やはり、”筋”では有名な話のようだ。

 準備ができるまで、道具屋の女将と話をした。

「テイマーの意匠を彫ると、素材やら調整が必要になるけど、いいのかい?」

「それでも、無いと不便だから、頼みます」

「こっちは商売だからいいけど、予備に10本も必要なのかい?」

 値段を聞いて、腕輪サイズを5本と首輪サイズを5本で依頼をした。
 魔石でもOKだと言われたので、持っていた魔石を見せたら、買い取りの値段を聞いて、本数を決めた。

「えぇ他にも、予定ですけど・・・」

「まぁこっちは商売だから、いいけど・・・。それに、意匠だけを真似て、他にはオートアジャストだけって注文だから・・・。本当にいいのかい?」

 女将さんは、奥で作業している旦那さんに視線をむける。
 まずは、レオ用の腕輪を作ってくれている。意匠だけでなく、白い毛並みに合うように色を何色か持ってきて、ミルとミアに聞いている。

 それを、二人が選んでいる状況だ。
 他の、10本もミルとミアに色を選んでもらう予定だ。

「えぇ構いません。テイムをしている魔物だと解るようにしないと・・・。意匠が彫られていないと、連れて歩けないですからね」

 首輪だけで問題がなければ、アウレイアやアイルを連れて歩ける。リデルは、希少性が高いから難しい。他のヒューマは大丈夫かもしれないけど、ジャッロやヴェルデやビアンコやラトギは無理だろう。

「他には、どんな魔物を予定している?」

 話をぶった切って、こちらからの質問に切り替える。
 女将さんのペースで話をしていたら、こちらが聞きたいことが聞けない。

「女将さんに聞きたいのですが・・・」

「なんだい?」

「俺が持ってきた腕輪の素性は・・・」

「あぁ教会が売り出した物だろう?」

「やっぱり・・・。それで?」

「知っているよ。あれを付けなくて正解だよ」

「え?」

 女将は、俺を手招きして、さっきよりも2段ほど音量を落とした。

「前までは、優秀なテイマーを配下に置けば、魔物討伐が優位に進められるからだとか、魔物は危険だから教会が管理するとか、いろいろ理由を付けていたけど、結局は、教会派の貴族の子弟に、強力な魔物を渡すための仕組みだったのさ」

「え?」

「あんた・・・。気が付いたから、意匠を真似した物を注文したのではないのか?”鑑定”持ちなら、判るだろう?」

「あっ。鑑定は、俺じゃないので・・・」

 ミルに視線を向けると、女将さんはなんか納得した表情を浮かべる。
 ”鑑定”をばらすなら、ミルが持っていることにした方がよいだろうということになっている。

「そう・・・。奥さん?」

「えぇまぁ。それで?」

「テイムをされた魔物を取り上げるためだよ」

「・・・」

 ”やっぱり”と、いう印象しかでてこない。最悪な方法だ。
 レオの様子を見て居ると、両者の間で納得しないと、テイムはできない。力ずくで行う方法もあるのだが、そんな方法で従えても、100%の力は発揮されない。

「その時に、邪魔になるのが、魔物の主人だ」

「え?」

「あの腕輪を両者がするのには理由があって、魔物に主人を誤解させるためだと言われている」

「(最悪だな)」

「ん?それと、他の10本の意匠はどうする?」

「意匠は違ってもいいのですか?」

「大丈夫だ。腕輪。あぁ主人側と同じ意匠が刻まれることが約束だ」

「そうですか・・・。ミル!ミア!」

 二人を呼んで、意匠をあと2つ決めてもらう。
 俺とミルが使うためだ。

 ミアは、護衛用に4体が追加できるように予備に作ってもらう。俺に2体で、ミル(マヤ)に4体を護衛兼連絡係にすれば、外でも眷属たちと一緒に居られる。まぁ連れて行けるのは種族を選ぶ必要はあるだろうけど・・・。

「女将さん。俺以外にも、似たような依頼があったと言っていましたけど・・・」

「あぁ。なんでも、貴族様が庶民や商人の依頼を受ける場所を作ったらしくて、そこで”鑑定”を持っている子が居るらしくてね」

 お?
 ミルも女将さんの話を聞いて、ミアをレオに預けて、こっちの話を聞くことにしたようだ。

「へぇ・・・。どこの家か、女将さんは知っていますか?」

「もちろん。ミヤナック家で、ローザス殿下も協力しているという話だよ」

「へぇ。その人たちが居る場所は知っていますか?」

「もちろん」

 女将さんは、簡単な地図を書いてくれた。
 これで、ギルドの位置がわかった。フェムの店に行く前に、情報が得られたのはいいことだ。

 それにしても、もう活動を開始していた。
 それとも、フレット関係から教会筋の情報が流れたのか?

 まぁいけば情報が手に入るだろう。

 ミルが俺を見て居るのに気が付いた。
 ミルも、ギルドの話だと解ったのだろう。ギルドが立ち上がっているだろうとは思ったけど、ここまで急激に拡大したのは、ミヤナック家とローザスが依頼を出しているのかもしれないけど、道具屋まで噂だけかもしれないけど、話が来ているとは思っていなかった。

 ギルドの話は、女将さんは、それほど詳しくは知らなかった。
 それからは、教会の愚痴や貴族からの依頼の愚痴を聞かされて居る時に、腕輪が完成した。

 代金は、魔石で支払って、おつりが有ると言われたけど、女将さんに面白い話が聞けたお礼だと言って渡した。

 レオに首輪を嵌めた。最初は、腕輪にしようかと思ったけど、レオから首輪のほうが動きやすいと言われたので、首輪にした。ミアも同じ意匠の腕輪をした。

 店を出た所で、ミルがミアを抱きかかえて、レオに乗せる。

「リン」

「ギルドの位置がわかった。急がなくてもいいだろう」

「うん!」

 今度はレオに乗ったままのミアを俺とミルで挟むようにして、王都を散策する。
 道具屋で、魔石を換金してもらったので、ミルの武器やミアの服を買う事ができた。

「あるじ」

「どうした?」

「レオが、前から嫌な感じがするって・・・」

 嫌な感じ?
 前方を見るけど、何も見えない。

「ミル?」

「うん」

 ミルが、前方に向かう。何も無ければいいけど、誰かが、レオを狙っているのだとしたら仕掛けてくる可能性がある。

「あるじ。ミルお姉ちゃんは?」

「大丈夫。レオが気にしている物を確認するために、少しだけ離れた」

「・・・。うん。大丈夫?」

「大丈夫だよ。ミルは強い」

「うん。レオも、ミルお姉ちゃんは強いと言っている」

「だろう。だから、安心していいよ」

「・・・。うん。わかった」

 5分くらいしてから、ミルから連絡が入った。

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