プロローグ
「今回の依頼はちょっと力が入るわね」
孤児たちと一緒にレナの焼いたクッキーを摘まみながら、シスターベルガが呟くように言った。
レナの横でコーヒーを飲む修道士ディックがフッと吹き出した。
「なんだよ。昔のことを思い出すのか?」
「そりゃね。忘れたわけでは無いもの。どうしてどこの皇太子もこんなにバカなのかしら」
「見た目だけで妃を選ぶ王族が多いんだろうぜ? 奴らの価値は見た目の美しさだけだから。政治をするのは所詮官僚さ」
「でも皇太子妃候補になるととんでもない勉強を科せられるのよ? その王妃には無かったのかしらね?」
「そりゃあっただろうけど、のど元を過ぎたら熱さを忘れるんだよ。奇麗なだけで頭は軽いくせに、やられたことはやり返すって人間の性には従順なんだろうさ。そんな奴らが育てた息子だぜ?」
「純正のバカね」
「正真正銘のバカだな」
2人はフッと溜息を吐いた。
「今回はゼロとアンとキャトル、それと……」
「エース投入か? 力が入ってるねぇ。今回のシナリオならサンクが適任だろう」
「いいわね」
「ではそういうことで。サシュはいつものように頼むよ」
二人の前で子供たちと一緒にクッキーを頬張っていたサシュが頷く。
「了解」
三人は頷きあって席を立った。