真相
塔季は鳳神社に手がかりがあるような気がして、玄助と宵の異世界通りを通過する。
戦えるとすれば玄助だけだが、濡れ女はともかく他の悪鬼にも勝てる見込みはない。
「本当にここ通るの?」
「鳳神社まで行ってみよう」
「居るとしたらそこに居そうな気がするよ」
塔季は呟きながら、寄ってくる影を見つける。
話は中断。玄助に誰なのか聞く。
「悪鬼…
着物姿の妙齢のご婦人なのだけれど、百鬼夜行の最後の鬼で、旦那の浮気相手の手紙を読む鬼女の怪異だ。
深雪の話の途中で、清姫の話をしたところが響いているのかもしれない。
「どちらまでいらっしゃいます?」
そんな声が聞こえてくる。
玄助は青行燈に聞こえない声量で塔季に呟く。
「あのおばさん苦手」
「ああ、逃げるぞ」
確か公園を抜ける別ルートがある。
「……詳しい話は後だ」
玄助は頷くと搭季の後を追った。
鳳神社の裏手に息を切らせた2人が辿りつく。
祠があって、欠けた水笛がある。
「これ見て、玄は思うことがないか?」
塔季は玄助に隠していることを話すように迫る。
玄助はついに打ち明けることを始めた。
「大石医院で会ったんだけどね。金時って妖怪商人の案なんだ」
雪女深雪は許婚に未練がある。何度も時代を戻って思い出したい。
それは白蝋王という、本当は居ない首領の幻影を生み出す。
1度は戊辰戦争まで戻った。でもそれは妖怪側にとっては不都合だ。
「未練は解消させない。でもそれじゃ深雪の心が持たない……」
最初持っていた雪だるまの髪飾りは砕けた。水笛ももう破片になってしまった。
「……今なら間に合う。僕の持っている反妖香で。一緒に願って!」
「戻って来い! 深雪!」
空中に
深雪が戻ってくる。しかしひとりではない。
一緒に杖を持った男が出現し、何か話しかけている。
深雪の表情は虚ろ。この男の管理下にあるのかもしれない。
「お前誰だ……?」
「奈落の神様……いや、君たちには若い時の金時……
塔季は難しい顔をする。この鳳神社は妖しの行動圏だそうだ。
奈落に力を使われたら、塔季も玄助も無事では済まないと思う。
それでも玄助は欠けた水笛を持って妖怪術師に語りかける。
「勝手なことじゃないよ……もう終わり」
深雪の精神は限界だ。これ以上世界を続けることはできない。
金時はそれは間違いだと言葉をはさむ。
「精神が限界でも続くんですよ……続けなければならない!」
舞台はいくらでも用意できる。
深雪が糸の切れた人形に変わり果てても、舞台があれば劇は続く。
「大体、世界は妖しを否定する方向に向かっているんだ」
奈落も妖狐も明治が終われば否定される定めだ。