計画
『だ、大丈夫だよ。今度も二人で生き残ろう』
僕は次のゲームに怖がる愛梨をなんの根拠もないが励ます。
『うん、でも……』
愛梨はやっぱりダメそうだった。
僕は愛梨の肩を持ってベットの方へ歩く。
『今日は疲れたから、休んだ方がいい』
僕は愛梨を横にさせる。
『もう、やだ。やだ……』
もうずっと泣いている。
『おやすみ』
僕は部屋を出ようと立ち上がる。
『待ってよ。こっちに居て』
彼女が僕を呼び止める。
後ろを振り向けば、ベットから体を乗り出し、僕を見つめている。
『わ、わかった。愛梨が寝るまでは一緒にいるよ』
『うん』
彼女は満足そうに再びベットで横向きで寝る。
『手、出して』
僕は彼女の言われるがままに手を彼女の方に動かす。
すぐに僕の手を彼女は両手でサッと取り、がっしりと握る。彼女は安心しきった顔で目を瞑った。さっきまで泣いていた女の子とは思えないほど綺麗だった。
『あ、あの、そのもう手を外しても』
ドキドキする。今まで地獄の時間しかなかったから。こうして落ち着いた時になるとすごく緊張する。握手会でもここまで長く手を握ることはない。
『ダメ、私が寝るまで繋いでて』
彼女が目を瞑ったまま言う。
プルプルの張りのある唇が目に着く。長く僕の2倍ぐらいのまつ毛が太陽に照らされ美しい。
『私ね、私たち生き残れるかな?』
『生き残れると思う、一生懸命頑張れば』
『そうね』
『僕は最初から最後まで愛梨には元気で笑っておいてほしい。今日みたいなことはもしたくない』
『うん、私も』
すごく落ち着いた静かな時間が続いた。
気づけば愛梨は寝ていた。僕の手をぎゅっと握り締めていたても緩んでる。僕はそっと手を離す。
僕の手は凄いぐらい手汗が出ていた。
『恥ずかしいな』
『おやすみ愛梨』
僕は部屋を出た。
僕はコンピュータを起動する。9000HALによれば基地の7割を破壊するしたら終わるらしい。
僕はずっと何時間も考えた。しかし何も思いつかなかった。
僕はそのまま寝てしまった。
『起きて……起きて!、起きてよ!』
僕はゆっくりと目を開ける。
愛梨が僕を起こしにきていた。
『あ、あ、うん、起きた』
『そう!じゃあそろそろ朝食取りましょ!』
『わかった』
『……』
愛梨はボソボソ何かを言いながら朝食を持ってきた。
『はい!いつもの蒸した芋と薬!』
『ありがとうございます』
『なんか元気そうですね』
『なに?元気のない私がいいの?』
『いや、そうじゃ』
『わかってる、笑っててほしいでしょ』
『あ、うん、そうだね』
数時間前の自分の行動が恥ずかしく思えた。
『あ、照れた。顔赤いね。可愛い』
『あ、きょ、今日、次のゲームの準備をしたいんだけど何かいい案ないかな?』
『え!私に聞くの?……うーん?』
愛梨は人差し指で顎を刺し、考え込んでいる。
『どうしたらいいかわからないだ』
『あれ!だよね?えーと、砂嵐が来るんだよね?』
『あ、うん』
『んー』
愛莉はまた考えている。
『じゃあそうよ!近くの洞窟に基地を移動させれば良いじゃない!』彼女は僕に向かって机から身を乗り出し言った。
『だけど、僕たち2人だけじゃ時間が掛かってしまうと思う。それにそんな大きな洞窟ないし』
『んーそうねー』
やっぱりいい案が出てこない。
『あ!じゃあさ、最低限必要な所だけ洞窟に入れたらいいじゃん!』
愛梨がまた閃いた。
『あ、そうか。それなら大丈夫そうだ。じゃあまずは近くの洞窟を調べていこう』
僕たちはパソコンで付近の地形を調べた。
『あ!あったそれ』
愛梨が机に乗り上げてパソコンの画面に指差す。
愛梨の胸が肩に少しだけめり込む。すこし刺激が強すぎる。ずっと意識して、肩の方に目をやってしまう。
意識を逸らそうと目線を前に戻した。
彼女のうなじが見える。ちょこんと一つだけホクロがあった。普段見れない所なのでなおさらすこし興奮した。
『で、どっちにする?』
愛梨が聞いてきた。
『え、あ』
『聞いてた?もーちょと』
愛梨のうなじに気を取られすぎて肝心の話を聞いていなかった。
『ん?どうしてそんなに耳赤いの?』
僕は愛梨に少し欲情した気まずさから目線をずらす。目線の先は愛梨の胸が当たって居る肩を見てしまった。
『あ……そ、そのごめんね。当たってたね。うん、もう一度、言うね』
愛梨も自分の身体が僕に当たって居るのに気づいて、ぎこちなく恥ずかしそうに顔を赤て言った。
『あ、僕もごめん』
『ううんうん、別に気にしてないから』
『で、そのこの二つが近くにある洞窟だね』
『どこも基地のモジュール二つ分は入りそうだ』
『そうね、基地全体で十個のモジュールだからローバーも守りたいし、ここから切り離すのは三つかな?』
『そうね、じゃあどれ残すの?』
『えーと、エアロックは残して、ここの部屋は残したい』
『そうねもうこれだけでモジュール二つ分ね』
『そうだなここのリビングとエアロックだけ残そう』
『その、と、トイレとかシャワーはどうするの?』
愛梨は少し恥ずかしそうに言う。
『あ……』
僕も言われるまで気づかなかった。
『それは、ひとまず簡易トイレを使おう』
『え、ええそうね、それしかないよね』