326章 鶏の値上がり
アカネ、ハルヒは店の前にやってきた。
「ハルヒちゃん、この店でいいかな?」
「はい。ありがとうございます」
ハルヒは瞳をキラキラとさせる。どこからどう見ても、小学生にしか見えなかった。
「アカネさん、いらっしゃい」
『「セカンド鶏+++++」の鍋をください。鶏肉は2人分お願いします』
「かしこまりました。お代として、2000万ゴールドをいただきます」
注文したのは「セカンド鶏+++++」。「セカンド牛+++++」ではない。
「桁を間違えていませんか?」
『「セカンド鶏+++++」は、3日間で、100倍に値上がりしました。当分は値上がりが続くものと思われます』
値段の高騰によって、牛肉を同じ値段をつけるようになった。安くておいしいという、鶏肉のイメージは完全に崩れ去った。
「どうしてそんなに・・・・・・」
「アカネさんのいないときに、一時的なウイルスが発生したんです。鶏に効果を発するタイプだ
ったらしく、90パーセントは死滅してしまいました」
鳥の死滅によって、値段は急激に上昇したのか。市場は分かりやすい反応を示している。
「私がいれば・・・・・・」
「アカネさんがいたとしても、鶏は救えなかったと思います。気に病む必要はないですよ」
魔法を使用すれば、病原菌を一瞬で消滅させられる。食用としての安全を確保したまま、鶏を救うことができたはずだ。
店長の目尻の皺は柔らかくなった。
「仮に救えていたとしても、ウイルスにかかった鶏は捨てられるだけです。病原菌にかかったものを、口の中に入れたいとは思わないでしょう」
テオス、ソラは水を浄化するときに、魔法を完全に信用していた。異世界に住んでいる者たちのほうが、信頼度は高いのかもしれない。
「アカネさんの援助を受けられたからこそ、大地震のあとも生きていられるんです。木材、バナ
ナ、水をもらえていなかったら、私たちは確実に死んでいました。生活水準は向上しても、食料
を購入できない状態では生きられません」
食料、水なしで生きられるのは、アカネのみ。他の人たちは、生活のために食料、水分を必要とする。
ハルヒは値段を知って、愕然としていた。
「アカネさん、気が引けてしまいます」
「ハルヒちゃん、注文は取り消せないよ。一緒に食べよう」
「アカネさん、生活は問題ないですか?」
「いろいろなところの仕事をして、莫大な収入を得ている。2000万ゴールドくらいなら、痛くもかゆくもないよ」
ハルヒは引っかかる部分があったのか、苦笑いをしていた。
「2000万ゴールドくらいですか。私も一度でいいので、いってみたいですね」
「・・・・・・」
「おかあさんから聞きましたけど、アカネさんは本当にすごいです。私たちはどんなに努力しても、足元にも及びません」
アカネの能力は、努力で入手したものではない。それゆえ、どのような反応をしていいのかわからなかった。