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第20話 王女様と再会しました

街に繰り出した俺達が最初に向かったのは、王都の流行発信地と言われている服屋。



安いのにデザインセンスが良いと、若い女の子達に人気だそうだ。



もちろんマリンさん情報なのだが。



入り口の扉には冒険者マークが貼ってある。



このマークのある店は、冒険者割引が効くらしい。



それもランクに合わせて割引率が変わるらしいから、昨日C級に上がった俺達には財布に優しい。



なんと全商品40%引きになるそうなんだ。



勢い込んで店の前まで来て、異変に気付いた。



非常に弱いが誰かがこちらを監視している。



危機察知能力を最小限にしていたので、分かり難かったが間違いない。



しかもこの薄い気配は高度な気配遮断能力を持っている者に違いなく、最低でも3人はいるようだ。



気配察知を少し強くしたら、周りの強い悪意に強烈な目眩が!



危なかった、また意識が刈り取られるところだった。



気配察知を最低に戻す。



でもこれではっきりした。



たしかにこちらを監視しているようだが、俺達に向けてじゃない。



店の中のようだ。



最近、危機察知能力を連発していたので能力が強化されてきたみたいで、視線や悪意の対象まで何となく分かるようになってきた。



高嶺の花に対する羨望や商売仇への憎しみから来るものなど、店に向けられている悪意に紛れて、店の中を心配するような、悪意では無い善意の視線もいくつか感じとれる。



とりあえず、俺達に向けてのものじゃ無ければ良しとしよう。

というか、この程度の視線や悪意を気にしていたら、この街には住めないし。



「さあ入ろうか。」



ミーアの背中を押して、店の中に入った。



「カラーン!いらっしゃいませ!」



「この娘、ミーアの普段着を何着かと、下着を何セットか用意してあげてくれますか。」



入るなり愛想良くしてくれたお姉さんにミーアの着る物を見繕ってくれるように頼む。



ミーアは俺に見て欲しそうだけど、俺のセンスよりお姉さんの方が確実だしね。



「まあ、良いお兄さんね。ミーアちゃん、お姉さんが一番似合うのを探してあげるわね。」



お姉さんが微笑ましそうに俺達を見て、ミーアを奥の方に連れて行った。



少し妬みの感情を感じたけど、あのくらいは問題無いだろう。



うん?何か視線を感じる?

間違いなく俺に対してだ。

でも悪意は感じ無いな。



視線の先を追う。



数人の店員に囲まれた少女が、明らかにこちらに視線を向けていた。





>>>>>>>>>>>>>



今日は久しぶりに、お忍びで街に出てくるためのドレスを買いにこの店に来ています。



王都の流行発信地と評判のこの店の服はわたしの大のお気に入りです。



さすがにお城の中で着るわけにはいきませんが、お忍びで街を散策する時はこの店の服と決めています。



いつもはお城に服をたくさん持って来てもらい、お母様と一緒に選ぶのですが、今日は店を訪れることにしました。



先日のシルバーウルフの件もあり、お父様やお母様が気遣って下さったようです。



本来ならランス達が護衛の任に就くのですが、ランス達に側に居られたらせっかく念願が叶ったというのに台無しですよね。



だから今日は魔法師団に頼んで少し離れて見守って戴くことにしました。



魔法師団の方達、気配を消すのがお上手なので、お忍びがバレることも無いでしょう。






「うん?この感じ、もしかしてあの時の?」



わたしはシルバーウルフに襲われた時に助けてくれた謎のお方とよく似た気配を店の中で感じました。



しかも今はあの時とは違い、はっきりと気配を感じ取れます。



お城で魔力波長台帳を調べた時は残念ながら見つかりませんでしたけど、間違いなくあの波長と符合しますわ。



気配の方に視線を向けると、わたしよりも少し年上の男性と、少し下と思われる少女が入り口近くで店員と話していました。



いきなりお声掛けするわけにもいきませんし、どう致しましょうか。



こんなことならランスも連れて来るべきでした。



店のオーナーや店長があれこれと服を持って来ては一生懸命わたしに似合うものを探して下さっているのですが、あの方に夢中で気もそぞろですわ。



あっ少女が店員さんと奥に行ってしまわれました。



あの方がこちらを向かれた瞬間、目が合ってしまいました。



わたしは思い切って、あの方のところに近づいて行きます。



突然のわたしの行動に、侍女や護衛の女騎士さんも驚いておられます。



あの方はやはりわたしに気付かれておられたようです。



わたしをジッと見ておられますわ。



「あの、もし間違いだったらごめんなさい。



あなたはわたし達をシルバーウルフから守っ下さった方ですわね。」



いきなり突拍子も無い話しを致しました。



もしあの方でなければ、意味が分からず動揺を見せるはず。



「あー、やっぱりあなたはあの時のお姫様ですよね。



やっぱりわたしのことが見えていたのですね。目が合ったような気がしていたのです。」



「あの節は本当にありがとうございました。



あなた様の顔が見えていたわけではないのですが、薄らと気配だけを察知出来たのです。



もしご都合が宜しければ、これからお礼をさせて頂きたく思いますが。



両親も喜ぶと思います。」



わたしとしましては、命の恩人であるこの方にお城でおもてなし差し上げたいところです。



それにあれだけの魔法が使えるのですから、魔法師団へもお誘いしたいという思いもあります。



いえ、この方が望まれたらの話しではありますが。



「如何でしょうか?」

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