私が呟いたとき、後ろから物音が聞こえました。
そう言い残して男は消えてしまいました。残されたのは私の心の中に刻まれた悲しみだけでした。
私はそのあと、泣き疲れて眠りについてしまったようです。気がつけば、朝を迎えていました。
「あれ?夢だったのかな?」
ふと窓の外を見るとそこには魔人山の姿があります。私は急いで支度を済ませると、家を出ることにしました。魔人山に、少女の魂を返しに行こうと思ったからです。私は玄関を出て空を見上げました。
「さようなら」
私が呟いたとき、後ろから物音が聞こえました。振り返るとそこには男が立っていて私に微笑みかけてきます。そしてこう言いました。
「さぁ、行きましょうか?」
***
―――ねえ。私と一緒に、魔人山へ行きましょう。あの遊郭へ。女たちの怨霊が渦巻く場所へ。
「はい」
男はそう言うと、手を差し伸べてきました。
そして二人は手を繋いで、ゆっくりと歩き始めました。
(終)