165章 家に戻ってきた
アイドル撮影を終えて、家に戻ってきた。
アヤメは何事もなかったかのように、仕事に臨んでいた。本当は何かあったのかもしれないけど、気づかれないようにしていたのかもしれない。
温泉に入っていたシーンは、すぐにテレビで流される。視聴率は70パーセントを超え、社会現象を巻き起こした。単純計算で、10人に7人は入浴シーンを見ていたことになる。
2日間の仕事をこなしたからか、深刻な疲れを感じていた。休みをしっかりとって、明日の仕事に備えたいところ。
布団で休もうと思っていると、玄関のチャイムを鳴らされる。ミサキは余力をふりしぼって、玄関のほうに向かった。
玄関の扉を開けると、思いがけない人物が立っていた。
「ミサキちゃん、こんにちは」
「ホノカちゃん、こんにちは・・・・・・」
ミサキは疲れているのか、大きな欠伸を繰り返す。
「ミサキちゃん、とってもつかれているみたいだね」
「アイドルの仕事をやったら、クタクタになってしまった」
片道7時間の移動は、腹ペコ少女にはきつかった。仕事の依頼を引き受けるときは、近い場所にしたほうがよさそうだ。
ミサキの体は前のめりになる。ホノカは危機を察したのか、両肩をしっかりとつかむ。
「ミサキちゃん、すぐに休んだほうがいいよ」
「ホノカちゃん、ありがとう」
「ミサキちゃん、ベッドまで行くことはできる?」
「うん。いけると思う」
ミサキは一歩ずつ、一歩ずつ、ベッドに近づいていく。ホノカはその様子を、不安そうに見つめていた。