166章 優しさ
ミサキは目を覚ます。
時計を確認すると、6時を回っていた。睡眠前は3時を指していたので、3時間以上も眠っていたことになる。片道7時間移動は、体に大きなダメージを与えた。
3時間以上の睡眠をとっていたからか、強烈な空腹に見舞われることになった。すぐに何かを食べなければ、危険な状態である。
ミサキは体を起こそうとするときに、ホノカに声をかけられた。視界はぼやけていても、聴力は機能していた。
「ミサキちゃん、パンを食べよう」
ミサキはパンを受け取ると、すさまじい勢いで食べ進める。お行儀の悪さを気にするよりも、おなかを満たすのを優先したい。
パンを食べ終えたあと、布団の上には大量のパンくず。夜の睡眠までに除去して、ベストの布団で眠れるようにしたい。
「ミサキちゃん、元気になった?」
「うん。ちょっとは元気になれたよ。ホノカちゃん、ありがとう」
空腹からは解放されていないものの、ちょっとはましになった。ホノカのパンに対して、心から感謝する。
「ホノカちゃん、すっとここにいたの?」
「うん。ミサキちゃんが起きてくるまで、ずっと待っていたの。ミサキちゃんのことを考えると、放置するわけにはいかなかった」
「3時間も束縛してごめんね」
「そんなことないよ。ミサキちゃんといられて、とっても幸せだったよ」
ホノカの温かさに触れたことで、とっても優しい気持ちになれた。
「シノブちゃんは2時間前、マイちゃんは1時間前にやってきたよ。睡眠中ということもあって、家の中には入らなかった」
「シノブちゃん、マイちゃんもやってきたの」
ホノカは小さく頷いた。
「ミサキさんの様子が気になって、こっちにやってきたみたい。私がいることを知ると、お願いしますといって帰ったよ」
シノブ、マイは仕事終了後に、足を運んでいる。二人の優しさに対して、ポカポカになっていくのを感じた。
「三人の思っていることはただ一つ。ミサキちゃんに元気になってほしい」
ミサキの掌に、ホノカの手の体温。ふんわりと包み込まれているようで、優しい気分になれた。