11話 1番隊の7班に所属することになったが、関西弁の女の子がクソ性悪だった件について
数十分後、俺は目を覚ました。
ソフィアさんに負けて、気絶していたのだと思いだした。
ソフィアさんは意識が戻った俺に気付いた。
「大丈夫ですか・・?」
「はい、大丈夫です。それにしても、ソフィアさんはどうしてこんなに強いのに、兵士にならないのですか?」
俺が疑問に思い、質問するとソフィアさんがゆっくり答えてくれた。
「それは・・。私はメイドの仕事の方が好きだからですかね。でも、私は元々兵士で2番隊の隊長を務めていました。」
ええ・・!!隊長クラスの実力者だったのか・・?
「え?じゃあ、今の隊長の方々と同じくらい強い・・ということですか・・?」
「それは分かりませんよ・・。私にはMPがありませんから。」
・・ん?MPがない・・。さっき、この世界の人間には全員少なからずMPを持っていると言ってた気がするけど。
「私は体内にMPが存在しない唯一の人間なんですよ。だから、魔術などが一切使えません。しかし、その代わりに超人的な肉体を持って生まれました。」
そうか・・。だから肉弾戦があんなに強かったのか・・。
「なるほど・・・。ありがとうございます。」
「いえ、いいんです。それよりも君の課題が分かりましたよ。」
「はい・・。お願いします・・。」
俺は集中して聞いた。ソフィアさんが言っていたことは、俺はさっきまで様々な技を連発していた。
それは、普通の殴りや蹴りにMPを乗せることで、無意識に発動された技らしい。
それもそのはずだ。俺はまだ全然経験を積んでいないのに、蹴りに炎のエフェクトが出たりしていたから・・。
今後は、自分の技についてよく理解し、意図的に技を出すことで、より有効的になっていくようだ。
しっかりやって行こう。
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昼食後、俺は1番隊のところに呼ばれた。リリス隊長がいる。
「ケイ君。1番隊の中でも班で編成を行っているんだ。3人一組の班だよ。君には、一人穴の開いている7班に入ってもらうよ。」
リリス隊長にそう言われ、7班の他の2人の方を見た。
両方女性で、片方は緑髪で団子ヘアーの俺と同じくらいの女の子で、もう片方は少し年上の眼鏡をかけた灰色の髪のショートカットの女性がいた。
リリス隊長が紹介してくれた。
「これが7班の君のメンバー。灰色の髪の方が班長のミラだ。そして、緑色の髪の子が班員のマリーだ。二人ともとても優秀な隊員なんだ。仲良くしてあげなさい。」
7班メンバーを紹介してくれたあと、俺が挨拶をした。
「よろしくお願いします!俺の名前は鶴来圭と言います!」
俺が自己紹介すると、緑髪のマリーが悪そうな顔で睨みつけてきた。
「なんや、君。弱そーやん。こんな奴と同じ班なんて、ウチは嫌やわぁ~。」
関西弁・・。ってことはライトのメイドさんのサリアさんと関りがあるのかな?
顔も似てるし、髪の色も同じだから、サリアさんの妹だろうか?
「私は、この度新しく配属された7班の班長になったミラです。この子の言うことはあまり気にしないでくださいね。」
灰色の髪のミラさんは、丁寧な口調で俺に言った。
「あはは・・・。」
俺が軽く頭を下げると、また緑髪のマリーが俺に話しかけた。
「ふんっ。まぁ、せいぜい頑張りぃや。あんまり足引っ張んなや。うちらは忙しいねんから、死にかけても助けへんで?」
すげえ・・ガツガツ来るなこの子・・。余程自分の腕に自信があるのだろうか・。
俺も自身も持って答えた
「大丈夫。俺は負けないから。」
すると、リリス隊長が話し始めた。
「では、早速君たちに任務だ。明日、王都の外に出て、魔物と戦ってもらうよ。」
俺たち7班は、これから外の世界に狩りに行くことになった。
俺が召喚されたこの世界には、「魔獣」と呼ばれる生き物がいるらしい。
明日のターゲットは、ゴブリンという醜い顔をした人型の怪物だそうだ。
俺の班の説明と任務の説明を聞くと、リリス隊長は1番隊の他の班の方を見て、話し出した。
「今、私が言ったゴブリン討伐の任務は、非常に厄介だ。なぜなら、ゴブリンは数が多く、キリがないからだ。そのため、明日この7班だけではなく、1~10までのすべての班でゴブリンの殲滅に向かいなさい。親玉のゴブリンを打ち取った班の班長には今空いている、1番隊副隊長の席を与える!!」
それを聞くと、他の班の兵士たちはざわざわざわめいていた・・。
みんな、副隊長の席が欲しいらしい。俺の隣にいる緑髪のマリーが鼻を鳴らしながら言った。
「フンッ!!リリス隊長にしてはまともな命令だすやんけ!しゃーないな!ほな、さっさと終わらせて帰るか!」
マリーがそういうと、慌てて7番隊班長のミラさんが謝罪した。
「す、すみません~!!皆さん、きかなかったことにしてくださ~いっ!!」
そう言って、彼女は必死に謝っていた。
この人も大変そうだな・・。俺はそう思った。
そして、リリス隊長が部屋を出て行くと、みんな副隊長の席を狙って明日の任務に向けて盛り上がっていた。
俺の目的は魔族たちを滅ぼして、元の世界に帰ることなので副隊長の席など微塵も興味がない。
でも、俺の班のミラ班長は多少興味はあるのだろうか?
俺はミラ班長に質問した。
「あの?ミラさんも副隊長の席を狙っているんですか?」
すると、ミラさんは慌てていた。
「とっとんでもない!!私なんかに副隊長なんて務まるわけないよ~。でも、もしゴブリンの親玉と最初に遭遇しちゃったら、ちゃんと討伐するけどね。」
「へーそうなんですか。」
だが、マリーはイラついた表情をしてミラさんに言った。
「はぁ・・ウチの班の班長がこんなんではアカンわ。こりゃ、班の中でも外れを引いてもうたようやなあ・・・。」
こいつ・・。さすがに言葉を選べよ・・。
俺のマリーの第一印象は嫌な奴に決定した。
すると、なにやら他の班での盛り上がりが大きくなっていった。
水色の髪の男が大声でみんなに話し始めた。
「俺は4班の班長アルフだ!!!この1番隊ではリリス隊長の次に強いのは俺だ!!俺が副隊長になるのが相応しい!!お前ら、明日ゴブリンの親玉を発見したら俺に報告しろ!!もし、勝手に討伐しやがったら殺すからな!!」
このアルフという4班の班長の男は見るからに強そうだ。見に纏っているMPが隊長たちに近い。
言っていることは強欲的だが、1番隊でもトップクラスの実力を持つようだ。
現に、他の1番隊の兵士たちは、アルフに怖気づいている。
そんな時、俺の近くで、マリーが舌打ちした。それを見て、班長のミラさんはめちゃくちゃ慌てている。
やめろマリー!!アルフに気付かれたらやべえぞ・・!!
だが、マリーは堂々とアルフに向かって言い放った。
「何言うとるん?お前。明日の任務。先に親玉を見つけた奴が狩るべきやろ。」
その言葉を聞いた瞬間、アルフの目つきが変わった。
「おい、女。俺様が誰だかわかっているのか?」
マリーはその問いに対して平然と答えた。
「知るかボケ。お前みたいな雑魚に興味はないねん。」
この発言で、アルフの堪忍袋の緒が切れた。
「おい、コイツの班の班長は誰だ・・!!」
アルフが鬼のような形相でこっちに近づいてくる。
「わ、私です!!」
ミラ班長が震えながら答える。
「おい、てめえの班のガキ、教育しとけ。それと、明日の任務。分かってるよな?親玉のゴブリンを見つけたら俺に討伐させろ。実力的に俺が副班長になるのが相応しいんだよ。」
ミラ班長はペコペコして謝罪している。
マリーがまた何か言いそうになったので、俺がマリーの口をふさいで黙らせた。めちゃくちゃ暴れている。
俺はマリーがまた余計なことを言う前に、廊下に連れ出した。
廊下に出ると、マリーがブチ切れた。
「なんやあの野郎!!偉そうにしよってからに!!」
いや、確かにアイツの態度は気に食わないけど、あんなところで喧嘩売るのはまずいだろ・・・。
「まあまあ落ち着けって。俺たちは今日来たばっかの新人なんだぜ。」
俺がなだめるように言うと、次にマリーは俺を睨みつけてきた。
「喧しい・・。殺すぞ!!」
マジかよ・・。おっとこれは刺激しない方がいいな。
俺はそうそうに部屋に戻ろうとした。
背後でマリーが俺に罵詈雑言を言い放っている。
コイツとうまくやっていくのは大変そうだ・・。