12話 王国最強の剣士は、過去に今の俺のメイドさんから逃げ出していた件について
俺は、その後夕食など全て済ませ、ベッドに横になっていた。
あぁ・・。ゲームしてえなぁ・・。マック行きてえなぁ・・。
現実世界のことを考えていた。すると突然、部屋の中に声が響いた。
「おーい、起きてるかい?ケイ君。」
この聞き覚えのある声は・・・!?
「うおぉっ!びっくりした・・・。アスター隊長ですか?どうしました?」
「いや、明日!!初任務なんだって?その激励に来たんだよ!!」
アスター隊長はいつもハイテンションだ。
「あ、ありがとうございます。頑張ります!!」
そう答えると、肩をパンと叩かれた。
「明日。君の班の班長を副隊長にしてあげなよ!!」
いや・・でも、アルフが明日親玉を見つけたら俺に狩らせろって・・。勝手に討伐したら殺すって・・。
「あの、兵士同士で喧嘩や殺人とかってダメですよね?」
俺がそう言うと、アスター隊長は笑顔のまま答えた。
「うん。規則では禁止だけど。皆隠れてやってるから・・!!」
えええ!!嘘だろ・・。
「それじゃ頑張ってねぇ〜♪」
普通にやばいことを隊長のこの人は見過ごしているのか・・。本当に適当な人だなと内心感じていたら、俺のメイドのソフィアさんが戻ってきた。
「あら?君は・・・・」
ソフィアさんはアスター隊長に気付く。
アスター隊長は振り返ると、驚いて腰を抜かしていた。
「ああ・・あああ!!!ソ・・ソフィアさん!!」
隊長ともいえる方がすごく取り乱している。ソフィアさんに怯えているようだ。
「久しぶりですね。アスター君・・。」
ソフィアさんは真顔だが、目が怖い。声も低い。これは完全に怒っているぞ。
2人に過去何があったのだろうか・・・?
「じゃ、僕はもう行くよ。ケイ君、じゃあね~・・。」
さりげなくアスター隊長は俺の部屋を出て行こうとした。
「待ちなさい」
ソフィアさんが言う。
「ひぃいい!!!ごめんなさいぃ!!」
情けない声で謝った後、アスター隊長がダッシュすると、ソフィアさんが高速でアスター隊長の腕を掴んだ。
すげえ・・王国最強の剣士が捕まった。
「アスター君。どうしてメイドを変えたのですか?私では何かご不満が?」
ん?この言葉から考察すると、アスター隊長のメイドさんは昔ソフィアさんだったのかな?
そういえば、リリス隊長が、ソフィアさんが怖すぎて、逃げ出した兵士がいたって言ってたけどそれってもしかしてアスター隊長!?
「い、いえ。特に理由など・・。い・・痛いですよ・手、離してください」
ソフィアさんがギリギリとアスター隊長の腕を握りしめている。もし、腕が俺のだったらとっくに折れてるだろうな。
「いいんですよ。君がメイドを変えようと。私には今ケイ君がいますから・・。だから、これは最後のお仕置きです!!!」
ソフィアさんがアスター隊長の腕を引っ張った。
アスター隊長は大量の汗を流しながら、焦っていた。
「もう・・!!勘弁してください!!転移魔術、テレポート!!」
シュタッ!!
さすがは王国最強の剣士。瞬間移動して逃げてしまった。
なんだか、俺もソフィアさんが怖くなってきた。もし逃げなかったらアスター隊長はあの関節技でノックアウトされてしまっていただろう。
俺も逃げ出してえ・・。
ソフィアさんはアスター隊長が逃げると、ため息をついた後、俺の方に近づいてきた。
「ふう。邪魔者がいなくなりましたね。ではケイ君。就寝のお時間です。ベッドに・・。」
おれはそれに従い、ベッドに横になる。だが、なぜかソフィアさんも俺のベッドに入ってきた。
「あ・・あの?これはどういうことでしょうか?」
すると、ソフィアさんは真顔で
「何か問題が?」と返した。
俺は黙って目を閉じると、横のソフィアさんに抱き着かれた。
「うっ・・!!あ、あの・・?」
俺が驚いて目を開けると、ソフィアさんの顔がすごく近くにあった。
ソフィアさんは顔を赤くしていた。いつもクールなソフィアさんのこんな表情は見たことがない。
「ねぇ、ケイ君。君はメイドを変えたりしませんよね?」
ソフィアさんが俺の耳元でそう囁いた。
吐息が耳にかかってすげえ心臓がドキドキする。
「そ、そんなことはしないですよ」
俺がそういうと、ソフィアさんは安心したような笑みを浮かべた。
そして、抱きしめる強さを強くした。
ギリギリギリギリギリギリギリギリ・・・
く・・苦しい・・。力強すぎ・・
「もし・・逃げたら許しませんからね・・。」
ソフィアさんはそう囁いた。その声はどこか弱々しく、寂しげだった。
俺が苦しくてうめき声を上げていると、少し緩めてくれた・・。
女性に抱かれていると、恥ずかしくて体が熱くなってきた。
きっと顔も真っ赤になっているはずだ。
ソフィアさんは俺が苦悶の表情をしていると、「可愛い」と呟いた。そして、いきなり俺にキスしてきた。
チュッ♡
「んぐっ!?んー!!」
俺は慌てて離れようとしたが、ソフィアさんは俺の後頭部を掴んで離さない。
舌が入ってくる。歯茎を舐められ、唾液を流し込まれる。俺の口の中はもうソフィアさんに支配されていた。
あの厳しくて冷酷なソフィアさんにキスされている・・!!まじで刺激が強すぎる・・。
俺は完全に力が入らなくなってしまった。
すると、ソフィアさんはベッドから出て、「おやすみなさい。良い夢を。」と言って俺の部屋を出て行った。
その夜はなかなか眠れなかった・・・。昨日のリリス隊長といい。俺には刺激が強すぎる・・。でも、さっきのキスが忘れられず、いつまでたっても頭から離れなかった。