10話 修行 フィジカル最強メイドさん VS 少林寺拳法俺
訓練が始まり、ソフィアさんから戦闘においての大事なことを教えてもらった。
「この世界の人間は全員MPを持っています。そのMPを消費して、身体能力を向上させたり、魔術を使ったりすることができます。MPは自分で体から生成することができます。」
「じゃぁ、MPさえあれば誰でも戦えるということなんですね?」
「はい。ですが、MPは自然回復を待つしかありません。なので、MPは温存しておいた方がいいでしょう。それと、戦いに勝つには経験が必要になります。戦いの後、経験値が自分に刻まれ、今後のMP生成スピードが上がったり、溜めて置けるMP上限が上がることがあります。それ以外にも、バトルIQの向上などのバフ効果もあります。なので、なるべくたくさん戦いましょう。」
「はい。わかりました。」
「それでは、私と組み手を行います。君の能力を用いて私と戦ってください。」
そうして、ソフィアさんは俺と距離を取って構える。
「あの、俺の能力に「演武」と言うものがあるんですけど、それを使うとソフィアさんと俺の戦力比が6:4になるんです。それは使わない方がいいですか?」
すると、ソフィアさんは少し考えていた。
「そうですね。素の君の実力が知りたいので、ひとまずその能力は置いといてください。それでは始めます。」
ソフィアさんが構えた。武器など何も持っていない。
俺も拳を構えて、ソフィアさんに向かって走り出した。俺の攻撃をソフィアさんはよけた。そして俺の顔面に蹴りを入れる。
俺は後ろに飛んで避ける。
ソフィアさんは俺の目の前まで移動していて、腹に掌底を打ち込んだ。
ドッ!!
「グゥウウッ!!!」
息が詰まった。俺は地面に膝をついた。
ソフィアさんは俺の頭を掴んで地面へ叩きつけた。
「ガッ!!」
俺は頭を打った衝撃で一瞬意識が飛びそうになったが、何とか堪えて立ち上がった。
・・・ックソ!!反撃しろ俺!!気持ちで負けるな・・!!
「少林寺!!脚式、烈火脚!!」
俺の両足が炎を纏ったように赤く光った。俺はソフィアさんの腹部目掛けて右足を振り抜いた。
俺の攻撃は空を切った。ソフィアさんの姿が消えたのだ。
「後ろですよケイ君。」声が聞こえた瞬間、背中から激痛を感じた。
「カハッ!!」
振り返ると、ソフィアさんが立っていた。
「今のは、武術ですか?素晴らしい技でしたね。」
ソフィアさんは微笑んだ。
「でも、課題が多いですよ君は。」
「・・・」
・・・なんだろう。凄く嫌な予感しかしないんだけど・・・。
「演武を使われなくても、私の攻撃が見えていませんでしたよね?」
「うっ、はい。見えてません。すみません。」
確かにそうだ。素の俺の力じゃ、ソフィアさんと比べるとスピードもパワーもクリリンと悟空ぐらいの差がある。
これほど違うのか・・・。
「では、次に演武を使ってください。それでもう一度相手をします。」
「よしっ!!了解です。少林寺、術式展開、演武!!」
俺は演武を発動する。俺は急激にパワーアップする。
MPの存在を知ってから、なんとなく俺自身のMP残量が分かってきた。演武を使ったことで、急激にMPの量が増えてる!!ソフィアさんがそれだけ格上ってことか・・!!
俺はソフィアさんに高速で技を繰り出す。
「少林寺、拳術、連撃!!」
ソフィアは俺のスピードの急激な上昇に驚いていた。そして、俺のこの能力は興味深いと思った。先ほどまで手も足も出なかった俺の攻撃が、無視できないスピードとパワーに変わっていたからだ。
ソフィアは笑みを浮かべた。
演武発動中は、相手と自分のステータスを6:4にできるのだ。つまりソフィアさんが強ければ強いほど、俺も強くなるということだ。
「素晴らしい能力ですね。でも、一つ一つの技に理解が足りないようです。」
ソフィアさんがギアを上げてくる。
俺のスピードに対応してきた。
「ッ!?」
・・・速い!!速すぎる!!
だが、演武のおかげでどれだけ速く、強くてもついていけている。
ただ、俺には決定打に欠けるという明確な欠点があった。
「君の課題がはっきりとしてきましたね。それでは攻めますよ。」
俺はぐッと息をのむ。集中しろ・・。ヤベエ攻撃が来るぞ・・。
ソフィアさんはポケットに手を入れると、そこから鉄球と斧が括り付けてある鎖を取り出した。
明らかに、ポケットの容量と武器のデカさが合っていない
まさに4次元ポケットだ。
「このポケットは10億円で取引される代物です。無限に物を出し入れできるんですよ。」
ソフィアさんがそう言い、俺が驚いていると、その武器で襲い掛かってきた。
俺はなんとかそれを防ごうとしたが、圧倒的な力の差で吹っ飛ばされてしまった。
「ガハァ!!」
壁に激突し、肺の中の空気が全て抜けてしまう。
クソっ・・・。見えていたのに受けきれなかった・・。
「おや、まだ意識がありますね。大したものです。」
ソフィアさんが余裕そうな表情で言った。
「演武を使っているからといって、油断しないほうがいいですよ。」
ソフィアさんが鎖を振り回しながらこちらに近づいてくる。
やべえな・・。もうそろそろ限界だ・・。最後に大技かましてやるか・・。
俺は深呼吸して息を整える。ソフィアさんは少し待ってくれた。
「少林寺、奥義、双龍乱舞!!」
俺は演武を解いて、ソフィアさんに向かって飛びかかった。
演武状態じゃないから、ソフィアさんの攻撃を全部見切ることはできない。だから、自分の直感を信じて、ギリギリまで引き付ける!!
「なっ!?」
ソフィアさんの顔に焦りの色が見える。
(この子・・!演武を解除して、互角の劣勢を断ち切ったの・・?やるじゃない・・。)
ソフィアさんは驚きながらも冷静だった。
演武状態以上の俺のスピードを見切って、俺にカウンターを喰らわせようとしてくる。
でも、もうこれ以上の技は出せないため、打ち込む以外に選択肢はない!!
「はぁあああ!!!」
「ふぅううう!!」
2人の声が重なる。
バゴォオオオオオ!!!
俺は白目を剥いて力尽きた。
俺の攻撃はソフィアさんのフィジカルには通用していなかった。
ソフィアさんは俺を抱えて、日陰のある所まで運んでくれた。
気絶している俺を見ながら、ソフィアは呟いた
「演武ですか・・・。素晴らしい能力です。しかし、あれだけの戦いの中で演武を解除するとは、恐れ入りましたよ。」
ソフィアさんが微笑んで言う。
「君はまだまだ伸びますよ。これからの訓練でさらに強くなれます。」