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「隼くん……ありがとう。本当にありがとね……。」
僕の手を取り、何度もそう言う菜摘さんの目からは涙が止まらなかった。
僕は、菜摘さんの為になることをできるのだろうか……。
菜摘さんが傷ついたときや悲しくなった時、誰よりも理解して一番そばにいてあげられるだろうか……。
分からないけど、そうなりたいと思った。
強く強く、そう思った。
「……隼くん、私……隼くんに甘えちゃいそうだよ……」
潤んだ瞳を不安そうに僕に向けて、菜摘さんはそう言った。
「甘えてください。僕はもう、菜摘さんに甘えちゃってますから…。」
「ふふ、そうね。……ほんとにいいの?」
「はい!僕は菜摘さんの一番の味方ですから。」
僕の言葉に、菜摘さんは少し笑ってくれた。
心のどこかが軽くなったのか、涙を拭って上を見上げている。
「隼くん、熱測ってくれる?」
「はい!」
「……どうかな?」
「……38度超えてます…」
「そっ……かぁ……」
「風邪引いたりしてましたか?」
「ううん。そんな感じはしなかったんだけど……毎日エアコンがガンガン効いた部屋にいたからかな?」
「……菜摘さん、僕今日菜摘さんの看病します。」
「…え?」
「菜摘さんの熱が下がるまで、僕が色々やります!」
「ええ…隼くん?」
「僕、昔は結構病弱ですぐ風邪引いたり熱出したりしてたんです。だから、看病は得意ですよ。……とりあえず経口補水液と冷却シートを買ってきます。菜摘さんは、楽な格好に着替えて待っててください。」
戸惑う菜摘さんを横目に、僕は菜摘さんの家を出ようとした。
「隼くん……どうしてここまでしてくれるの?」
玄関のドアを開けようとしたとき、背後から菜摘さんの声が聞こえた。
「……菜摘さんのことが、大切だからです。大切な人が弱っているときは、全力でできることをしたいんです。」
僕は振り向き本心を言った。
少し遠くから見えるベッドの上の菜摘さんは、僕の言葉に優しく頷いてくれた。