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「菜摘さん……」
僕は菜摘さんの言葉に、ショックを受けていた。
「菜摘さん、どうして……」
だけど最愛の父を思い出し泣きじゃくる彼女に、次の言葉はなかなか言えなかった。
「僕だって……味方ですよ……。」
口をついて出た言葉。
驚き顔を上げる菜摘さん。
どうして……
「どうして、今は味方がいないなんて言うんですか……。確かに僕は…お父さんみたいに菜摘さんを救うことはできないかもしれません。でも……菜摘さんは僕をあんなに助けてくれた…。僕の味方でいてくれた。だから僕だって……菜摘さんの一番の味方でいたつもりなのに……」
自分で言えば言うほど独りよがりなことに気がつく。
だけどそんなことを自分で窘める余裕もないくらい、今は菜摘さんの中に自分がいなかったことへのショックに堪えられなかった。
「隼くん……」
「……お父さんと同じだとは思わないです。僕はたった2ヶ月一緒にいただけですから。でも……僕だって、菜摘さんの味方なんです。誰も菜摘さんを認めてないなんて言わないでください。僕は菜摘さんを……」
「わかった……。わかったよ隼くん。ごめんね……」
気がついたら、僕も泣きそうになっていた。
菜摘さんはそんな僕の手を優しく握ってくれた。
体調が悪くて気持ち的にも悲しくなっている菜摘さんの前で自分勝手に泣くなんて、僕はまだまだ子供だ……
そう思いながらも、菜摘さんが握ってくれた手があまりにも暖かくて安心していた。