221章 メイホウがやってきた
夜勤を終えて、日常生活に戻ってきた。
体は疲れないものの、心の疲労は蓄積する。睡眠を取ることによって、リフレッシュを図る必要がある。
ベッドに入ろうかなと思っていると、室内が暗くなった。
「アカネさん、こんにちは」
「メイホウさん、こんにちは」
どのような要件なのかなと思っていると、メイホウはゆっくりと口を開いた。
「アカネさんに渡したいものがあります」
メイホウは見たことのない、マシンを取り出す。
「これはなんですか?」
「幽霊の位置情報がわかる道具です。これを持っていけば、幽霊退治は大いにはかどるでしょう」
そんな便利な道具があるなら、最初から出してくれればいいのに。所持することによって、仕事は格段にはかどる。
道具を受け取るときに、メイホウに感謝の気持ちを伝える。
「メイホウさん、ありがとうございます」
「アカネさんの仕事にプラスになるよう、いろいろとお手伝いをさせていただきます」
仕事が簡単に終わる→仕事量が増える→時間を奪われるという、三段論法が成立しかねない。
スローライフを送るにあたって、デメリットが大きくなっている。
「メイホウさんには十分にやってもらっています。できることだけでいいですよ」
「そうですか・・・・・・」
「はい。メイホウさんが疲れてしまいます」
相手のことを気遣うことによって、自分の意見を通しやすくする。ビジネスマンにとって、必須スキルといえる。
「アカネさんにそういわれると、いろいろと手伝いをしたくなってしまいます」
思いがけない展開ではあるものの、冷静に取り繕うことにした。慌てふためいたところを見せると、本心でないことを悟られる。
「お気持ちだけで結構です。ありがとうございます」
社交辞令をいったつもりだったけど、メイホウに通じることはなかった。
「ますますやりたくなってしまいます。明日はどんなことをしましょうか?」
言葉を発するほど、ボロを出すことになる。アカネはどのように応対していいのか、わからなかった。
「アカネさんのためになるのは、私の生きがいです。困ったことがあれば、すぐに相談してくださいね」
メイホウは満足そうな顔をしながら、室内からいなくなった。アカネはその様子を、静かに見守ることしかできなかった。