はわわわわぁ その1
今日の僕は、辺境都市ウリナコンベにありますコンビニおもてなし7号店の営業を終えた後、スア製の転移ドアをくぐってコンビニおもてなし本店があります辺境都市ガタコンベの商店街組合の建物の中にいました。
その応接室の中には、ガタコンベの周囲にあります辺境都市ブラコンベ、辺境都市ララコンベ、オザリーナ村、テトテ集落などの代表の方々も集合しています。
と、いうのもですね……
僕が領主代行を務めているガタコンベをはじめとした、ここに集合しいている都市や村、集落は全てブラコンベ辺境都市連合というものに加盟しているんです。
この世界に中心である王都から遠く離れている土地にあり、たまたま近隣同士だったみんなが一緒に助け合っていこうっていう趣旨で結成されている連合なんですよ。
そんなブラコンベ辺境都市連合では、1年の間に3回共同で大きなお祭を開催しています。
春の花祭り
夏の星祭り
秋の収穫祭
このお祭りは、ブラコンベ辺境都市連合に加盟している辺境小都市以上の都市が持ち回りで開催しています。
順番と言うわけではなくて、毎回話合いで開催都市を決定しているんですよね。
ちなみに……
このブラコンベ辺境都市連合に加盟している辺境小都市以上の都市は4つありまして、
辺境都市ガタコンベは僕が領主代行
辺境都市ブラコンベは辺境駐屯地の隊長ゴルアが領主代行
辺境都市ララコンベは同じく辺境駐屯地の副隊長メルアが領主代行
辺境都市ルシクコンベは極楽鳥人（パラダイスバードピープル）のグルマポッポが領主
そんな感じになっています。
僕をはじめ領主が代行になっている辺境都市ってのは、もともとは王都から派遣された人種族の領主がいたのですが、その領主が任期を満了した後のなり手がいなくて、領主不在のままなんとなくそのままにされていたところ、このあたりに住んでいてそれなりに社会的地位のある人種種族ってことで担ぎ上げられたわけです。
まぁ、実務的なことは各都市の商店街組合に勤務している蟻人さん達が今までもずっとこなしてくれていましたし、僕やゴルア達が領主代行に就任して以降もその体制が続いています。
おかげで、僕なんかはほんと名ばかり領主状態なんですよね……蟻人さん達の方に足を向けて寝られません。
さて
そんな中、今日は春の花祭りについての話合いがはじまりました。
……話合いと言いましても、すでに各都市の商店街組合で役場業務を行っている蟻人さん達が事前に相談しあって大筋は決まっているんですけどね。
ちなみに、今回の開催都市は僕が領主代行を努めている辺境都市ガタコンベで開催されることになっています。
これは、ララコンベは少し前に温泉祭りをしたばかりだったのと、ブラコンベは夏の星祭りを主催したいとの意向があったからなんですよね。
ちなみに、ルシクコンベの代表者は今日の会議には参加していません。
ルシクコンベは頭が雲の上に出ている超高い塔みたいな山の頂上にある大地を利用して建築されている辺境都市でして、
『ウチで開催しても誰もこれないぷひぃ』
との理由で、名ばかり連合参加している状態なもんですから、まぁしょうがありません。
そんなわけで……
今日のブラコンベ辺境都市連合代表者会議では
・花祭りの開催都市は辺境都市ガタコンベ
・各都市から例年通り屋台を出すこと
・各都市等から参加する屋台の配置に関しては話合いで割り当て作業を行う
そんな内容が報告されていきました。
すでに事前の根回しが終わっていることもあって、特に質疑もなく粛々と会議は進行していきます。
蟻人さんにこういった会議を仕切ってもらうと資料作成から事前の根回し、問題点の洗い出しなどまで完璧にこなしてくれますので本当に助かります。
この世界の蟻人族のみなさんって、まさに事務仕事をするために産まれてきたような方々なんですよね。
しかも、それを喜んで行われていますし。
まぁ、そんな働き蟻状態のみなさんですけど、交代でお休みはとられています。
バリバリ働いたあとは1週間連続でお休みとかとっているそうなんですよ。
それ以外の時はそれこそ24時間働いてますよね？ ってぐらい勤勉なみなさんなんですけど、それもこうやってしっかりオン・オフ切り替えているからこそ出来る芸当なのかもしれません。
さて、こういったお祭ではステージイベントも行われます。
例年は参加希望者を募って、芸を披露してもらうことが多いんです。
このステージイベントには、オザリーナ村で踊り子小屋を営んでいる踊り子のシャラと吟遊詩人のレイレイ達をはじめとした人達が参加予定になっています。
「ステージイベントに関しましては、まだまだ枠が残っているですです。各都市ではさらに参加者を募ってほしいですです」
司会を行っていた蟻人さんの呼びかけで今日の会議はお終いになりました。
んで、今日の資料をまとめてバッグにいれようとしていた僕なんですけど、そこに複数の蟻人さんが駆け寄ってきました。
ここガタコンベとブラコンベ、それにララコンベの商店街組合の蟻人さんみたいですね。
「タクラ店長さん、折り入ってお願いがあるですです」
「僕にですか？ はぁ、僕で出来ることでしたら……」
少し深刻な表情の蟻人さん達は、他のみんながいなくなったのを見計らってから、テーブルの上に一枚の地図を広げました。
その地図は辺境都市ガタコンベを中心にしたこの一帯の地図のようですね。
「実はですですね……このあたりの街道で妙な魔獣の目撃例が報告されているんですです」
そう言ってガタコンベの蟻人さんが指さしたのは、ガタコンベから南に延びている1本の街道でした。
……確かこの街道の先には小さな集落が点在しているだけだったはず……
「はいですです。今回の報告はその集落のみなさんからなんですです」
「ふぅん……で、その妙な魔獣って、具体的にどう妙なの？」
「はいですです。その魔獣を目撃した方々の証言を元にするとですですね……」
・人の3倍くらい大きい
・なんかうねうね動いている
・人と出くわすとすごい勢いで駆け寄ってくる
・びっくりして逃げ出すとそれ以上追ってこない
「……なんなんですか、そのよくわからない行動は……」
「そうなんですです。特に被害が起きたわけでもないものですですから辺境駐屯地に調査を依頼しにくいですです」
「それで、コンビニおもてなしの狩猟部隊に調査してほしい……ってことですか？」
「そうなんですです」
蟻人さん達の申し出を受けて僕は少し考えました。
相手が大きいとはいえ、人の3倍くらいなら鬼人の剣士でバトコンベの大武闘大会で決勝に残った実績のあるイエロと猿人セーテンでも楽勝で対応出来るでしょう。
ルアの旦那さんの、デュラハンのオデン6世さんもいますしね。
万が一のためにこの世界最強の魔法使いであるスアにも同行してもらえば盤石だと思います。
「……わかりました。じゃあみんなとも相談してなるべく早めに調査に行ってみますね」
「「「ありがとうございますます」」」
僕が笑顔で頷くと、蟻人さん達は嬉しそうに微笑みながら何度も頭をさげてくれました。
◇◇
んでもって翌日です。
僕達は早速ガタコンベから伸びている街道を南下していました。
スアの魔法の絨毯にのって街道沿いに南下しています。
その魔法の絨毯にのっているのは、
僕
スア
イエロ
セーテン
上記の4人に加えまして
イエロの弟子的存在の鬼人グリアーナ
オデン6世さん
パラナミオ・リョータ・アルト・ムツキ・アルカちゃんの、我が家の子供達
そういった面々です。
スアの魔法の絨毯はその大きさを自在に変化させることが出来るもんですから、今はかなり広いリビング並の大きさになっているんです。
で、その進行方向部分に座っている僕なのですが、その膝の上にはスアがいつものようにちょこんと座っています。
魔法の絨毯に乗る際には、ここがスアのベストポジションになっているんです、はい。
僕は、そんなスアを後ろから軽く抱きしめています。
そのせいでしょうね、スアもなんだか嬉しそうです。
そんな僕達をのせた魔法の絨毯はゆっくりと街道を南下していました。
