新居のお話
本日は、週末のお休みです。
この世界で展開しているコンビニおもてなしは。一部を除いてすべて定休日にしていますので、現在僕が店長を務めているコンビニおもてなし7号店も同じくお休みです。
そんなわけで、今日は少し家の片付けをすることにしました。
辺境都市ガタコンベにありますコンビニおもてなし本店の裏にある我が家ですが、これ、巨大名木の幹の中をくり抜く形で使用しています。
以前スアが済んでいた巨木は、今はスアが異世界に管理しているスアの使い魔の森の中に移動していまして、僕達の別荘的な存在になっています。
ちなみに、この巨木にはスアがプラント魔法をかけていまして、毎日味噌の実や塩の実などの、コンビニおもてなしで欠かすことの出来ない調味料類を中心に産みだしてくれていますので、これからも頑張ってくれることとおもいます。
その巨木の家に変わりまして、新しく僕達の家になっているのは……えっと、僕が知っている知識で説明いたしますと……どうやら世界樹の苗木的な巨木らしいんですよね。
スアがそこを管理している女神様の許可を得て1本連れてきて、プラント魔法をかけて僕達の家にしてくれたわけなんですが、以前は3階建てだった内部は地上5階地下2階になっています。
元々、コンビニおもてなし関係の資料なんかを保存したり、大きくなってきた子供達用の個別の部屋をつくってあげたいとか思っていたわけですが、これだけ大きくなれば問題ありません。
そんなわけで……
地下は、コンビニおもてなしの資料保存室
1階は応接室とリビング、それに大きめのキッチン
2階は子供達と僕達の個室と、みんなで寝る寝室
3階はミンスちゃんの部屋
4階はスアの蔵書部屋
5階はスアの研究室
以上の構成になっています。
各部屋には押し入れなんかも多めに作成しています。
3階のミンスちゃんの部屋なんですけど……この世界樹の苗木なんですけど、世界樹だけあって精霊がセットになっているそうなんです。
そんなわけで、このイルミンスールという世界樹をもらってきた際にその中から出現したのが、このイルミンスールの精霊こと、ミンスちゃんなんです。
ミンスちゃんの部屋は、家の中とは思えないほどの緑で満たされています。
本来であれば、世界樹の幹の中に存在しているはずのミンスちゃんなんですけど、小柄な女の子の姿のミンスちゃんは我が家の子供達と一緒に遊ぶのがすっごく気に入ったみたいで、24時間常に人型のままで存在していまして、いつもはこの部屋の中で休んでいて、子供達が学校から帰ってくると一緒になって遊んでいるんです。
……ちなみに
この緑がいっぱいのミンスちゃんの部屋ですが、時折スアが入り浸っています。
と、いいますのも……この部屋の中に生えている草木はすべてミンスちゃんが精製しているのですが、
「……すごい……神界にしか存在しない薬草がこんなに……世界樹の葉もこんなに……」
と、この世界最高の魔法使いであるスアもビックリするほどのレアな草木がわんさか生えているそうなんですよ。
ミンスちゃんも、スアが採取することを快く快諾してくれているもんですから、それを受けてスアもここであれこれ採取しては、それを使って研究を続けているんです。
ちなみに、家の外といいますか、枝の先に1つ大きな実の部屋が出来上がっていまして、その実の部屋には
『コンビニおもてなし・昆虫ゼリー販売所』
と書かれたちょっと小洒落た看板が設置されています。
これなんですけど、近くの山で生活している虫人さん達のために虫人用昆虫ゼリーを販売するためのお店なんです。
実の前側が開閉式のシャッターになっていまして、夜の間はここからお客さんの虫人さん達が出入りします。
虫人さん達は夜行性なので、この店舗も深夜から明け方まで営業しています。
ここの店員をしてくれているのは、パラナミオが召喚した骨人間です。
骨人間は同じ仕事を続けていると存在進化するそうなのですが……この昆虫ゼリー販売所で長いこと仕事をこなしてくれている骨人間漏れ以外ではなく……今では前掛けが常設装備と化している……なんといいますか、商人(あきんど)骨人間的な存在に進化しているみたいでして……
ま、まぁ、ここをよく利用している虫人のツンツクさんの話では、
「以前より接客がよくなったし、レジ作業も早くなってほんとありがたいんですよ」
とのことなんですよ。
骨人間は日の光にあたると砂化してしまうので、この仕事に従事するのには適任です。
◇◇
そんな新巨木の家の中を、僕はパラナミオと一緒に見て回っています。
僕とパラナミオは、コンビニおもてなし7号店の準備なんかで、この新巨木の家の中をのんびり見て回れていなかったんですよね。
「うわぁ……こんなにお部屋があったんですね!」
パラナミオは、目を輝かせながら各階を回っています。
いつも感情をストレートに表現するパラナミオ。
その笑顔を見ていると、こっちまで楽しい気分になってきます。
ホントに、素直で良い子に育ってくれました。
3階に出向くと、
「パラちゃん!」
部屋の中にある木の根元の寝床でうつらうつらしていたミンスちゃんが顔を輝かせながらパラナミオに抱きついていきました。
「ミンスちゃん、こんにちは!」
そんなミンスちゃんをパラナミオが笑顔で受け止めています。
我が家のみんなと仲良しになっているミンスちゃんですけど、特にパラナミオと大の仲良しなんです。
なので家の中にパラナミオがいるとわかると、その側をずっとついて回るんですよ。
そんなわけで、ミンスちゃんがべったりくっついたパラナミオと一緒に、スアの蔵書の部屋まで見て回った僕達。
「パパ、ミンスちゃんと遊んできます!」
そう言うと、パラナミオはミンスちゃんと手をつないだまま3階へと移動していきました。
1階の方からリョータ達の声が聞こえてきましたので、3階で合流してみんなで遊ぶみたいですね。
僕が、そんなパラナミオとミンスちゃんの後ろ姿を見送っていると、
クイクイ
僕の手を、スアが引っ張りました。
どうやら転移魔法でやってきたみたいです。
「……上……見てほしいの」
「上、って、スアの研究室だね」
僕がスアと一緒に5階へ上がると……その中は以前にも増して研究道具が満載になっていました。
以前が研究室の中に蔵書もあったのですが、新居では蔵書室が4階になりましたのでその分広くなったみたいですね。
「……ここで、魔法薬とか、研究するの……今までよりもっともっと頑張る、ね」
「ありがとうスア。これからもよろしくね」
僕は、小さくガッツポーズしているスアの頭を撫でました。
スアは嬉しそうな笑顔を浮かべています。
スアは、僕を部屋の片隅に連れて行きまして、その壁に手を触れました。
すると、そこに壁が出現したんです……どうやら、その奥に部屋があるみたいですね。
で、その中に入ると……その中にはベッドが1つ……うん、仮眠室的な……
そんなことを僕が考えていると、スアが僕にぴとっと抱きついてきました。
「……あのね……ここ、防音もばっちりなの……」
そう言いながら、頬を赤く染めているスア。
そんなわけで、僕はスアをお姫様抱っこしまして……おっと、ここからは黙秘させていただきますね。
◇◇
とまぁ、そんな新居でこれからも頑張る僕なわけです……えぇ、色々と頑張らないと……