154章 費やされる時間
10分足らずで終わったかなと思っていると、
「これくらいで勝ったと思っているのか」
という声が聞こえた。あれだけのダメージを受けたのに、魔物は絶命していなかった。こちらについても、ゴキブリさながらの生命力を有している。
「お前の力を見くびっていたようだ。これからは全力で行くぞ」
魔物はマッハスピードで、パンチ、蹴りなどを繰り出してきた。ダメージが蓄積しても、スピードは失われないようだ。
すごいのは手数だけで、威力は感じられなかった。この程度の威力では、子供を倒すのも不可能ではなかろうか。
攻撃をかわす必要性を感じないものの、すべての攻撃を回避することにした。全力を出したとしても、何の意味もないことを伝えたかった。
「降参するなら、いまのうちだぞ」
負けそうになっているくせに、降参を進めてくるとは。神経のおかしさについても、一流レベルに達しているようだ。
「その言葉、そのままかえしてやる」
魔物の動きがストップした直後、闇魔法で攻撃をしかける。
「ぎゃあああああ」
という声がしたのち、魔物は地面にすごい勢いで落下する。
「ドカーン、ドカーン」
という音が響き渡る。
三度目の正直かなと思っていると、魔物はこちらに姿を見せる。三度も地面にたたきつけられたからか、服はボロボロになっていた。
「まだまだ・・・・・・」
負けず嫌いが悪いとはいわないけど、状況を選んだほうがいい。絶対に勝てない敵に勝負を挑むのは、最大の愚であるといえる。
闇の魔法でとどめを刺せないのであれば、別の種類を選ぶ必要がある。アカネは光魔法で、攻撃することにした。
「闇の敵を蹴散らせ、ライトシャイン」
光魔法が魔物を直撃した。これで終わったかなと思っていると、
「われは回復した。まだまだ戦えるぞ」
と魔物がいった。光魔法は魔物の大好物のようだ。
魔物は元気を取り戻したのか、とんでもないスピードで攻撃を仕掛けてくる。回避するのは難しいので、防御の魔法を唱えることにした。こうしておけば、敵の攻撃を受け付けることはない。
魔物はガードを崩すために、100発、1000発と攻撃を繰り出してくる。通常のバリアであったなら、壊れていたのではなかろうか。
1000発の攻撃を繰り出したからか、魔物に疲れがみられるようになった。スタミナのある生物というのは、無茶をすると自分の身体が壊れるようにできている。
1002発目の蹴りを仕掛けようとする前に、
「身体が、身体が・・・・・・」
負荷に耐えられなくなったのか、魔物の身体は真っ二つに割れることとなった。
「やっと勝てた」
10分くらいで終わるはずだったのに、2時間もかかることとなった。魔物の驚異的な粘りによって、かなりの時間を浪費させられてしまった。
魔物と戦ったあとに、ココアの顔が脳裏をよぎる。アシスタントを名乗り出た女性は、どのような日々を過ごしているのだろうか。