153章 ココアのような魔物
魔物退治を開始してから、72時間が経過しようとしていた。
3日間で倒せた魔物は、30体にとどまっている。1日ペースで、10体しか倒せていない。
ゴッドサマーから聞いている、魔物の数は4000~5000である。1日10体のペースだと、400日から500日もかかることになる。仕事を終えるためには、かなりの日数を要することになりそうだ。
魔物退治が順調に進まないのは、1体を倒すのに時間がかかっているからである。1体を倒すために、平均で1時間以上を費やしている。
これまでの最長記録は、電流モグラの12時間である。1日の半分を、モグラ倒しに費やしたことになる。
電流モグラは攻撃、土の中に潜る動作を繰り返していた。ダメージを与えるチャンスはほとんどなく、攻撃を当てられなかった。そのこともあって、時間だけが浪費されることとなった。
知恵のなさも、時間がかかる要因となった。地上戦で倒すことばかりを考えて、土の中に仕掛けるという発想がなかった。その考え方にたどり着いていれば、15分くらいで倒すことができた。
モグラの次に時間がかかったのは、コピーキャットである。こちらについては、9時間近くもかかってしまった。
コピーキャットの特徴は、耐久性の高さにある。撃破するまでに、炎、氷、雷、風、光、闇の魔法を、500回も唱えることとなった。アカネには劣っているものの、防御性能に優れていた。
モンキーザウルスも強敵で、7時間近くかかることとなった。あまりに時間がかかったので、倒せないのかなと思ったこともある。
魔物を探していると、人間の形をした生き物と顔を合わせる。魔物界に人間みたいな生き物がいることに、大きな驚きを感じる。
魔物の顔はどういうわけか、ココアとそっくりだった。同じような顔はいるものの、ここまで似ているとは思わなかった。
ココアのような生物は、
「おまえを殺す」
といった。日本語を話したことに対して、アカネは目を大きく見開いた。
魔物の声については、シオリにかなり似ている。コピーしているといわれても、違和感は一ミリもない。
ココアでないとわかっているのに、仕掛けることをためらってしまっていた。本人であったら、どうしようという思いが生じている。
魔物は心を見透かしているのか、
「人間というのは弱いな」
と挑発してきた。アカネは悔しさを晴らすために、魔物に手を出していく。
「お前の力はそんなものなのか。そんな力では、我を倒すことはできないぞ」
ココアを殴れないという気持ちが、拳の威力を大幅に下げている。にっくき顔であったなら、実力以上の力を出せたと思われる。
「おまえがこないのであれば、こちらからいくぞ」
魔物は長い脚を使って、素早い蹴りを繰り出す。攻撃の速さだけでいうなら、これまででトップクラスといえる。
速さのレベルは高いものの、威力はそこまでではなかった。魔物は素早さに優れているものの、攻撃力は低めに設定されている。
「おまえ、痛くないのか」
魔物は体内のエネルギーを使い果たしたのか、完全に息切れを起こしている。スタミナについ
ては、通常の人間よりも劣っていた。
「私は無敵の身体だからね。どんな攻撃も受け付けないんだよ」
「そんなバカな・・・・・・」
ココアは優しい性格なので、人を傷つけたりはしない。顔はそっくりであるものの、中身はまったくの別物である。
「余談はここまでにしようか」
トルネードの魔法を唱えると、魔物は地面に叩きつけられる。
通常ならここで終わるところだけど、こちらの魔物はそういうわけにはいかない。ダメージを
複数回与えることで、ようやく勝利をつかめる。
魔物は一度では死ななかったのか、こちらに舞い戻ってきた。
「なかなかやるな」
絶命しそうな状態なのに、強気なことがいえるなんて。自分の状態が分かっていないようだ。
「他の生物と魔物は相容れない・・・・・・」
メガトンパンチを繰り出すと、魔物は地面に叩きつけられる。衝撃の強さからして、あの世に旅立ったと思われる。