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「リサはね。父さんのお友達の子供なんだ。ご両親が亡くなってね。誰も引き取り手がいなくてそれで、父さんが引き取ることにしたんだ」
「おばさんは反対だったんですか?」
「母さんが? まさか? 一番初めに賛成したのは母さんだよ。俺に兄妹がいなくて気にしててね。そんな事もあってリサを引き取るのには賛成だった」
「それなら、どうしてそんなにリサをのけ者にするんですか?」
「違うよ。パルちゃん。父さんたちは本当にリサが可愛いんだ。だから苦労もさせたくないし。心配もさせたくない。できるなら手伝いもさせたくはないと思ってるんだ。でも、手伝ってもらわないと宿屋が上手くいかない。そうなると生活させてやれないからね。だから最低限、手伝って、てなるんだ」
「そうだったんですか」
血縁関係はないと思っていたけど、そういう理由とは予想外だった。お兄さんは笑いながら納得したかと聞いてきた。納得はしたけど、この話、リサにどうしたものか。私はその事に頭を悩ませる。
優しい気持ちがすれ違っている。リサもおじさん達もお互いを思うからこんな事になっているのだろう。わたしは出来る限りの事をするとリサに約束している。その事を正直に話した方が良いだろうか? できる限りの事をすると約束したけど、このまま正直に話していいかも悩む。私が思っていた方向と違う方向性の話だった。おばさん達はリサが可愛かったのだと認識することが出来た。だが、これは事実を知ったから思えた事であって、知らないままだったら意地悪をされているとしか思えない、ともないとも思う。ここはお兄さんをこちら側に引き入れしまおう。やはり兄妹が間に入ってもらえれば大きな味方になってくれると思う。
「お兄さんはリサをどう思ってるんですか? この際正直に話してください。リサは本当に悩んでいるんです。自分だけ家族の中に入っていけないと感じています。このままだと関係は悪くなると思いますけど」
「冗談はやめて欲しいよ。ウチはねリサが中心なんだよ。それは俺もそう思ってる。始めてリサを見たときは本当に可愛くて。妹が出来たんだと嬉しくて。ずっと抱っこしてたよ。よちよち歩き出したときはずっと一緒に歩く練習をしたんだ。父さんはなかなかリサと遊べないって怒ってたし、母さんはリサが来てくれて良かったて言ってた。今も心配させてるから、早く何とかしたいって焦ってるんだ。そこは信じて欲しいと思うよ」
「それをリサに言ってあげてください。中途半端な情報だけで何も知らないから、不安になってます。私も同じ立場なら家族を信じられなくなりそうです。本当の事を話してほしいと思いますよ。今の状態では、心配だから、と言いう理由だけでは信じてもらえないと思います」
「そうかな?」
「そうです。本当の事を言うべきだと思います。他人だから気楽に言うって思われていると思います。でも、わたしはリサが不安に思っているのを見てきました。その上で言っています」
「でもさ、君はしっかりしているから平気かもしれないけど、ずっと血の繋がった家族と思っていたのに、急に友達の子供で血縁関係はありません、って言われてどう思う? 俺は嫌われるかともうと怖くて言えないよ」
「だったらいつ言うんですか?」
「言わないよ。家族としてこのまま」
「そんな、リサの不安はなくなりませんよ。家族に不信感を持ったままでいいんですか?」
「大丈夫だよ。宿屋の経営が安定すれば元に戻るよ」
「根付いた不安は消えませんよ」
「パルちゃん。信用して話したんだから、勝手にリサに話したりしないよね?」
わたしが何かを言う前にお兄さんに釘を刺されてしまった。
アウトだ。