アルーラ、祠を綺麗にする
「う〜ん、こんな感じかしら」
作業を始めてどれくらい経っただろうか。
ブラシや雑巾で徹底的に磨き上げた結果、祠はピカピカになった。
「やった後に言う事じゃないけどこれって公爵令嬢の仕事じゃないわね」
本来ならば庭師の仕事なんだろうと思うが何せ此処にいるのは私一人。
そして私はこういう作業が苦ではない、どっちかと言うと進んでやるタイプだ。
「後はお供え物としてパンを置いて……、女神様、これからこの地で暮らして行く事をどうかお許しください。そして平和な日常を過ごせる様にお守りください」
私は手を組んで祈った。
『あい分かった、貴女に女神の加護を授けましょう』
……ん? 今何か声が聞こえたような……。
気のせいかしら?
私は家に戻り改めて荷物の整理をした。
やっぱり体を動かすと気持ちが良い、私はすぐに眠りについた。
『アルーラ、聞こえますか?』
……ん? 誰か私を呼ぶ声が聞こえた。
「あら? ここはどこかしら?」
いつの間にか宮殿みたいな所にいた。
『アルーラ・ローズ、私は此処にいます』
目の前には神々しいオーラを身に纏った女性がいた。
「貴女はもしかして泉の女神様ですか?」
『えぇ、そうです。私はこの国を守護する女神の1人ヴィクトリアと言います』
「ヴィクトリアって……、伝説の三女神の1人じゃないですか」
『えぇ、そうですよ』
ニッコリ笑うヴィクトリア様。
『貴女は私が祀られている祠を綺麗にしてくれました、ですからお礼をしようと思い貴女の夢に入らせて頂きました』
「えっ、あの祠はヴィクトリア様の物だったんですか」
『えぇ、そうです。貴女が綺麗にしてくれたおかげで私も元気になれました』
そう言ってヴィクトリア様はお辞儀をしてくれた。
女神様に頭を下げられるなんてなんとも不思議な気分だ。