オネの1日のヒローカ詣 その2
辺境都市ナカンコンベで、ヒローカ詣に向かっている我が家の面々足すことのクローコさんの面々。
……しかし
何度見てもクローコさんの格好はすごいと言いますか……いつものヤマンバメイクが4割増しで濃くなっているだけならまだしも、ラメ入りでキラキラしまくっているワンレンボディコン……っていうか、この世界のどこで買ったんでしょうね、こんな服……
背中もざっくり開いていて、サイドもざっくり開いていて、胸元も……っていうか、クローコさんってば結構着痩せするんだなぁ……お店での制服姿からは想像も付かないほどの大きな塊がその胸に……まぁ、僕はスアのサイズが好みですので、そんなに興味はわかないんですけどね。
……おかしいな……元いた世界では結構大きめな女性の方が好みだったはずなんですけど……スアと結婚してすっかり好みが変わったといいますか……まぁ、今が幸せですので気にしないことにします。
そんな中……
「うわぁ……クローコお姉様、この衣装素敵ですわねぇ」
アルトが、クローコさんの服を見つめながらポーっと頬を赤くしています。
ちなみに……和装を好んで身につけるアルトは、今も晴れ着姿です。
で、
どうも、クローコさんの衣装のキラキラが気に入ったみたいなアルトはですね、
「このキラキラ、私の着物にも組み込むことは出来ないものでしょうか……」
そんなことを口にしながら、クローコさんが身につけている布面積の狭い衣装を見つめています。
その言葉を聞いた僕の脳裏には、スポットライトを浴びながらキラキラ輝くド派手な衣装に身を包んでいる某ラスボス演歌歌手の姿が浮かんでいたのですが……いやいやいや、アルトに限ってそこまで派手になるはずはない……はず、です……うん。
……ちなみに、アルトが着ている晴れ着は魔王ビナスさんが作ってくださったものなんです。
いつも和装を身につけている魔王ビナスさんなのですが、
「私が以前おりました世界では、これが普通の衣装だったのですわ」
とのことでして……色んな世界があるんだなぁ、と思った次第なんですよ。
で
その魔王ビナスさんに作ってもらった衣装を毎日着ているアルトなんです。
ちなみに……着物のクリーニングはスアが魔法で行ってくれています。
時に食べ物シミが出来たり、破れたりしてもですね、スアが人差し指を一振りすると元通りになってしまうんですよ。
ホント、スアってばすごいな……って、改めて思った次第です、はい。
ちなみに、この着物なんですけど……
コンビニおもてなしでも販売出来ないかと思って以前、展示即売会をしてみたことがあるんですけど……正直、人気はいまいちでした。
この世界では、冒険者の服的な服が一般的ですし、女性がパーティーに参加する際に衣装にしても中世ヨーロッパを思わせるようなドレスが一般的なんで、まぁ、仕方ないといえば仕方ないんですけどね。
……だからと言って、クローコさんの衣装が流行っているとも思えないんですけどね。
◇◇
そんなこんなで、僕達は役場の脇を抜けてその後方へ続いている道を歩いていきます。
その道は、すごい数の人々でごった返していました。
「うわぁ……これがみんなヒローカ詣に行く人なんですね」
周囲を見回しながら、パラナミオが目を丸くしています。
「うん、そうみたいだね。はぐれないように、パパの手をしっかり持っておくんだよ」
僕がそう言うと、パラナミオは
「はい! わかりました!」
満面の笑顔でそう言いながら、僕の右腕に抱きついてきました。
こうして見ると……パラナミオってばずいぶん大きくなったように思います。
山賊達から保護した後、僕とスアの養女として迎え入れてすぐの頃のパラナミオは、僕の腕に抱きつけるほど背が高くありませんでした。
まぁ、僕が190越えている長身っていうのもあるんですけどね。
そんなパラナミオが、今は、普通な感じで僕の腕に抱きつけているわけです。
子供の成長を実感出来て、なんだか僕も嬉しかったんですけど……
「パパ! リョータも!」
「アルトもお願いいたしますわ」
「ムツキもにゃしぃ!」
「では、アルカもお願いいたします」
といった具合に、みんなが一斉に僕の腕に群がってきた次第なんですよ。
僕の右腕にはパラナミオが抱きついていますので、みんなして僕の左腕に殺到しています。
さすがに、みんな一度には無理ですので……
僕はリョータと手をつないで、そのリョータとアルカちゃんが手をつなぎ、アルトとムツキはスアと手をつないで歩くことになりました。
アルトとムツキは
「お母様も大好きですので問題ありませんわ」
「ムツキもにゃしぃ!」
そう言いながらスアに抱きついているのですが……スアが超小柄なもんですから、3人とも背格好がほぼ同じなんですよ。
そのため、3人姉妹が並んで歩いている……そんな感じに見えなくもないと言いますか……
しかし、あれですよね……スアのあの体の中に、双子姉妹のアルトとムツキがいたんですよねぇ。
その事を思うと……なんか、ホント人間の体ってすごいなぁ、と思ったり……あ、スアはエルフでしたね、って、エルフと人間って何か違ったりするのかな?
そんな感じで、正月早々いろんなことを考えていた僕でした。
◇◇
ほどなくしまして、ヒローカのお墓に到着しました。
そこは、ヒローカ詣の参拝場所になっているからでしょうね、ちょっとした祠みたいな物がありました。
その中に、大きな石のモニュメントがおかれています。
大きさにして3メートルくらいでしょうか、その大きな卵のような形をしたそのモニュメントが、台座に乗っかった状態で置かれています。
参拝の皆さんは、その前に一列に並んでいます。
よく見ていると……
みなさん、まずヒローカの墓に両手をくっつけた状態で頭を下げています。
3度頭を下げてから手を離し、そしてきをつけの状態でもう一礼していますね。
どうやら、これがヒローカ詣のやり方なんでしょう。
「みんな、前の人達がやっているようにやるんだよ」
「「「はい、わかりました!」」」
僕の言葉に、パラナミオ達が元気に返事を返しました。
ほどなくして、そんな僕達に順番が回ってきました。
「じゃあ、まずはこのクローコが見本を見せてあげる! みたいな?」
そう言って、舌出し横ピースをしたクローコさんが、一歩前に出ました。
両手を墓につけて、3度頭を下げていったのですが……クローコさんってば、首にじゃらじゃらネックレスをつけているもんですから、頭を下げる度にそれが音を立てまくってすごいことになっていたんですよね。
接客中には、こういったアクセサリーは一切身につけないクローコさんですけど……うん、このセンスってば、やっぱり僕の世界のバブルそのものです、はい。
そんなクローコさんの参拝が終わり、今度は僕達の番です。
僕が墓に手をつけると、パラナミオやリョータ、アルカちゃんも一緒に手をつけました。
で、そのまま頭を下げていったのですが、
「パパのお店がもっともっと繁盛しますように……」
パラナミオが小さな声でそう言っているのが聞こえてきました。
リョータとアルカちゃんも同じように呟いています。
特にそうしろとも言っていないのに、自主的にそうやってくれているみんなです。
ホント、いい子に育ってくれています。
僕達についで、スア・アルト・ムツキの3人も参拝していきました。
「さて、参拝も終わったし……」
僕は、石の向こうへ視線を向けました。
どうやら、屋台が出ているようですね。
参拝が済んでから楽しめるように、ヒローカのお墓の向こう側にだけあるんでしょう。
「あの屋台をみんなで見て回ろうか」
僕がそう言うと、
「はい!」
笑顔で抱きついてきたパラナミオを筆頭に、みんなが僕に抱きついてきました。
なぜか、クローコさんまで抱きついてきたもんですから、そのアクセサリーがぶつかってきてちょっと痛かったんですけど……まぁ、それはご愛敬ってことですかね。