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雪山で雪遊び その4

 やってきた熊人さん達ですが、

 おじいさんがクマタンゴさん。
 子供さんがクリッタちゃん。
 そして、犬の魔獣がペットのモモノ。

 と、いうそうです。

 で、皆さんはスアが修理した、あの宿をかつて経営していたそうなんですよ。

 2軒あった宿の、新しい方をクマタンゴさんの息子さん夫婦とその子供のクリッタちゃんが、古い方をクマタンゴさんが、それぞれ従業員を雇って経営していたそうなんです。

 それが、数年前にいきなりあのデラマンモスパオン達がやってきてこの一帯に住み着いたんだそうです。
 人種族や亜人種族が嫌いなデラマンモスパオンは、このゲレンデを襲い、クマタンゴさん達の宿も破壊してしまったんだとか……

「……それで今では、クリッタの父さんと母さんは辺境都市に出稼ぎに出ての、ワシはこの山の麓で漁師をしながらクリッタとともに暮らしておるのじゃクマ」
「デラマンモスパオンも、麓までは降りてこなかったクマ」
 クマタンゴさんとクリッタちゃんの説明に、僕達は頷いていきました。

「……しかし、そのデラマンモスパオンを退治してくださったとは……本当にありがとうクマ」
「ありがとうございますクマ」
「ワン!」
 そう言って、クマタンゴさん、クリッタちゃん、モモノが一斉に頭を下げてくれました。

「いやいや、これはもうスアのおかげといいますか……」
 僕がそう言うと、スアは
「……旦那様と、子供達のために頑張っただけ、よ」
 そう言いながら僕と子供達を交互に見つめていました。

◇◇

 と、まぁ、そんなやり取りがあったわけですが……

 その後の僕達は、パラナミオ達子供組にクリッタちゃんを加えてソリ遊びを満喫していきました。

「きゃあ! すごく楽しいクマ!」
「でしょう! パラナミオもこれ大好きなんです!」
 クリッタちゃんと2人でソリに乗っているパラナミオ。
 2人は歓声をあげながら斜面を滑り降りています。

「あのような遊び道具……はじめてみましたクマ」
 そんなクリッタちゃんの様子を、斜面の裾で見ていたクマタンゴさんはびっくりしたような表情をその顔に浮かべていました。
 そんなクマタンゴさんに僕は、
「えぇ、僕が元いた世界の遊び道具なんで、この辺りでは珍しいかもしれません」
 笑顔でそう言いました。

 その後、

 クマタンゴさんも交えて、ソリ遊びを楽しんだ僕達。

 そのまま僕達は、日が暮れるまで、ソリ遊びを満喫していきました。

◇◇

 その夜……

 当然僕達は、スアが修復してくれた宿で一泊するつもりだったのですが……

 よく考えたら、ここってもともとクマタンゴさんと、その息子さん夫婦が切り盛りしていた宿なんですよね。
 そんなわけで
「あの、クマタンゴさん。勝手にこの宿を修復しちゃったんですけど……どうもすいません」
 僕はそう言ってクマタンゴさんに頭をさげました。

 いえね

 元々2軒あったこの宿ですが、スアが修復する際の材料を調達するために破損がひどかった方の宿を破壊して、荷馬車の停泊所にしちゃったんですよ。

 ですが

「いえいえ何をおっしゃいますやら。ここは、ワシらだけでは再開の目処もたっておりませんでしたクマ、そのせいですでに廃棄の手続きをしておりましたクマ。ですので、タクラさん達が改めて登録して好きに使ってくださってもかまわんですクマ」
 クマタンゴさんはそう言って笑ってくださいました。

 とはいえ、それでは申し訳がなさすぎます。

 そんなわけで、しばらくクマタンゴさんと僕は話合いを行っていきまして、

 この宿を、僕がコンビニおもてなしの関連施設として所有して、クマタンゴさんにはここの管理と営業をお願いすることで話合いがまとまりました。

 よく考えたらあれですからね。

 宿を修復したのはいいのですが、僕達が雪遊びを終えて帰宅してしまうと、この宿は管理する人がいなくなってしまうわけです。

 それにここは元々ゲレンデとして有名だった場所なんだし、

 ここが放棄された原因だったデラマンモスパオンもいなくなったし

 宿も1軒だけだけど直ったわけだし

 なら、遊ばせておくのはもったいないな、と思ったわけです、はい。

「みとってくださいクマ! この宿を以前にも増して繁盛させてみせますクマ」
「お爺ちゃん、クリッタも頑張るクマ!」
「ワン!」
 クマタンゴさんの言葉に、クリッタちゃんとモモノも元気に声をあげていきました。

「……しかし、となると息子夫婦を呼び戻したいところじゃが……あの2人は今、辺境都市でいい仕事についとるらしいクマ……と、なると、クマンコにお願いして帰って来てもらうクマか」

 ……ん?

 クマタンゴさんの言葉を聞いた僕は思わず首をひねりました。
「……あの、クマタンゴさん」
「何でしょうクマ?」
「……あの……今、クマンコさんって、言いました?」
「はい……長女なんですクマ。結婚して街へ出ておったのですが、今はシングルマザーですクマ。1人で働きながら子供を育てておりますクマ」
「……あの、そのクマンコさんって、辺境都市ララコンベで働いておられませんか?」
「えぇ、そうですクマ……あの、タクラさん、ひょっとして娘の事をご存じクマ?」

 その言葉を聞いた僕は、思わず苦笑をうかべていました。

◇◇

 そして、数十分後

「あんれまぁ!? 父ちゃんじゃないべさクマぁ」
 スアの転移ドアで、辺境都市ララコンベから駆けつけてきたクマンコさんは、クマタンゴさんを見るなりびっくりした声をあげました。
「なんと!? クマンコ、お前このタクラさんのお店で働いておったクマか!?」
 クマタンゴさんも、びっくりした声をあげています。

 ……いや、まさかとは思いましたけど……コンビニおもてなし4号店のクマンコさんが、本当にクマタンゴさんの娘さんだったとは夢にも思いませんでした。

 ……だって、クマンコさんはすごいなまりがあるのに、クマタンゴさんも、クリッタちゃんも全然なまりがありませんからね……

「あぁ、それはあれですぅ。結婚してしばらく住んどりましたところの放言がみについてしまいましたクマ」
 クマンコさんはそう言いながら笑っていました。

 ちなみに、子だくさんなクマンコさんですが、その子供さん達も全員連れて来いています。

 そんなわけですので……夕飯はみんなで一緒に食べました。

 今夜は、あのデラマンモスパオンのお肉がたくさんありますからね。
 みんなに、あの某はじめ人間的なアニメを彷彿とさせるような分厚いステーキを焼いてあげました。

 一度コンビニおもてなしに顔を出したついでに食材もあれこれ持って来ていましたので、サラダやスープも別に準備しています。

「さぁ、みんな。お腹いっぱい召し上がれ」
 僕がそう言いながらみんなの前にお皿をもっていくと、
「うわぁ、すっごいお肉!」
「これ、全部食べていいクマ!?」
 クマンコさんの子供さん達が一斉に大歓声をあげていきました。
 
 クマンコさん本人も、満面の笑顔を浮かべながらステーキにかぶりついています。

 我が家の子供達も、本日2食目にもかかわらず、
「このお肉おいしいです!」
 パラナミオが満面の笑顔を浮かべながらそう言ったのを筆頭に、みんな笑顔でお肉を口に運んでいます。

 スアも、このお肉が気に入ったみたいですね。
 夜は、拳2個分のお肉を切り分けていた次第です。

◇◇

 食事を終えた僕達は、その足で温泉にいきました。

 温泉は、宿屋らしく男湯と女湯があります。
 ここも、破壊されまくっていたのですが、スアが完璧に修復してくれています。

 男湯は、僕とリョータとクマタンゴさん、それにクマンコさんの家の男の子達数人です。

 パラナミオ達我が家の女の子達は、僕と一緒に入りたがったんですけど、今日はクマタンゴさんもいますからね。

 女湯は、スアに監督を任せて、みんなで満喫してもらいました。

「いやぁ……宿を直してもらえただけでなく、クマンコにまで会えるなんて……感無量クマ」
 クマタンゴさんは、笑顔でそう言いながら僕に頭をさげてくれました。
 その左右には、クマンコさんの子供達、クマタンゴさんにとってはお孫さん達ですね。
 そんなみんなが集まっていました。

 クマタンゴさんは、お孫さん達に囲まれて本当に嬉しそうです。
 
 その姿を見ていると、僕まで笑顔になれました。

 そんな感じで、僕達は雪山の宿の温泉をめいっぱい満喫していきました。

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