86章 ゴッドサマーがやってきた
住民の治療から一週間が経過しようとしていた。
冷蔵庫から「セカンド豚+++++」を取り出す。「セカンド牛+++++」の100分の1ほどの値段なので、どれだけ食べたとしても痛手にはなりにくい。お金を節約したいときには、もってこいの一品なのである。
値段は安いとはいっても、クオリティーは非常に高くなっている。「セカンド牛+++++」と同様に、一度でも食べたら病みつきになるレベルだ。
「セカンド豚+++++」は特別な環境で育てられているため、生の状態で食べることができる。
アカネは肉に火を通していない状態で、口に運ぶことにした。
「おいしい」
生の状態の「セカンド豚+++++」は、肉のうまみが凝縮されている。焼いたときと比べて、2~3倍のおいしさがあった。
「これを食べていると、とっても癒される」
あまりにもおいしかったのか「セカンド豚+++++」500グラムを、あっという間に平らげてしまった。食べきったあとに、もう少しだけ味わっておけばよかったと思った。
「次は『セカンド鶏+++++』.を食べようかな」
「セカンド鶏+++++」の値段は、「セカンド豚+++++」と同じくらいである。「セカン
ド牛+++++」よりも格安になっている。
「セカンド鶏+++++」も特殊な環境で育てられているため、生の状態で食べることができる。現実世界にいたときは、鶏肉を生で食べられるとは思っていなかった。
鶏肉を食べようとしていると、ドアをとんとんされることとなった。
「食事中くらいはゆっくりとさせてよ」
気分が沈んだ状態でドアを開けると、ドラゴンを思わせるような角が生えている生き物がいた。セカンドライフの住民でないことはすぐにわかった。
「アカネという人物はここにいるのか」
「あなたは誰?」
「わらわはゴッドサマーだ」
ゴッドサマーを日本語にすると神様。あちらの世界では、神としてあがめられているのかな。
「ゴッドサマーが何の用なの」
ゴッドサマーは軽く咳払いをする。
「裏世界からとんでもない人間がおるという話を聞いたのじゃ。それが本当なのかを、確認するためにやってきたのじゃ。おぬし、我と戦うのじゃ」
低レベルの脳をしているように見えて、きっちりと仕事はするようだ。裏世界の住民の頭脳レベルをあなどっていた。
多忙な仕事を押し付けられるだけではなく、無駄な戦闘をさせられるとは。セカンドライフにおける生活は、スローライフからあまりにもかけ離れている。
アカネはダメだとわかっているものの、とりあえず確認することにした。
「戦わないという選択肢はあるの」
ゴッドサマーは腕組みをしながら、完全否定する。
「ない。わらわは戦うまで、居座り続けるつもりじゃ」
無理に抵抗しようものなら、時間のロスは大きくなる。とっとと帰ってもらうためにも、相手をしておいた方がよさそうだ。
「わかりました。やらせていただきます」
仕事のないときくらいはゆっくりと休みを取りたいよ。心の中の響きは届きそうになかった。