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85章 自宅に戻る

 治療はなおも続けられていた。

「変形した指を治してください」

 どんな圧力が加われば、指は真逆に曲がるのだろうか。アカネは理屈を理解することはできなかった。

「わかりました」

 回復魔法をかけると、曲がっていた指はまっすぐになった。20くらいの女性は、指が元に戻ったことに感嘆としていた。

「ありがとうございます」

 女性の次の人はいない。長い戦いの幕が、ようやく閉じようとしていた。

「ようやく終わった」

 治療したのは総数で数万人となる。「セカンドライフの街」には、治療を必要とする人がたくさんいるようだ。

 治療を終えたばかりの女性に対して、マツリがねぎらいの言葉をかける。

「アカネさん、おつかれさまでした」

「今回は人が多かったですね」

「前回は100万ゴールドが必要でした。それゆえ、断念する人が多数を占めました」

 元々の時給は600ゴールド前後なので、お金を貯蓄するのは難しい。参加したくても、参加で
きない人で溢れかえることになる。

「今回は無料だったので、人が増えたと思われます」

 今回に費やしたのは200時間。睡眠を取らずにやったものの、8日以上もかかることとなった。

 200時間以上も拘束されたにもかかわらず、報酬は1ゴールドももらえない。無料で引き受けることに同意したにもかかわらず、お金が欲しくてたまらなかった。

 唯一の救いといえるのは、天気が良好であったこと。雨が降ろうものなら、治療に対するモチベーションはさらに低下していた。

 身体は疲れていないものの、心は完全に疲れ切っている。家に早く帰って、ご飯を食べたい。お風呂に入ってリラックスしたい。睡眠を取りたい。

「住民の治療については、定期的に開催します。そのときはよろしくお願いします」

「わかりました」

 アカネは返事をすると、瞬間移動で自宅に戻る。普段なら歩いて戻るところだけど、今回ばかりはそんな気になれなかった。

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