第一話
二十六歳にもなれば、緊張する場面というものにあまり遭遇しなくなると思っていた。
わたしは今、とても緊張している。
ティーカップを持つ手が震え、紅茶が上手く口に運べない。
現在のわたしは、来客対応用のドレスに身を包み、お茶会の準備が整った応接室で、ソファに腰掛けている状態だ。横には、いつもの執事用の燕尾服を着用したコリンが、姿勢正しく立っている。
コンコン、とノックの音。
「お嬢様。デリック様、ノア様、マーク様がいらっしゃいました」
ドアの向こうから、聞き慣れたメイドの声がする。
「…………ありがとう、通してちょうだい」
わたしは唾を飲み込んでから、メイドに返事をした。
──遂にきたか。
わたしは覚悟を決めた。
そう、わたしはあの三人を、自宅のお茶会に招待したのだった──。