第八話
「最後のハグは台本にねーけど?」
「いや……」
デリックの問いに、マークが言葉を濁す。
自分たちの劇が終わったので、みんな制服に着替えてから、一列になって観覧席に座っていた。
舞台上は、前のクラスと次のクラスの入れ替わりの最中だ。
「そうだよ、なんでアンちゃんにハグしたのさ〜?」
「だって……しょうがなかったんだって……」
「何が〜?」
デリックに次いでノアもマークを問い詰める。尋問みたいだ。
「アンが……本当にオレのこと好きみたいな顔するから……」
「はあ〜?」
デリックとノアが揃って怒りの声をあげた。ポカポカとマークの頭を殴り散らす。
「いて、いてて、やめろって」
「気のせいですぅ〜。アンちゃんはお前なんか好きじゃありません〜」
「そうだ、勘違いは恥ずかしいぞ」
ひとしきり殴って満足したのか、二人はようやく手を下ろした。
「アンさん、僕、どうでしたか?」
隣に座っていたコリンが、わたしの顔を覗き込む。
「そうね……、酷い演技だったわ……」
「えっ」
ガーンと効果音が聞こえてきそうなほど、コリンの眉がハの字に下がる。それを見て、思わず笑みが溢れた。
「──でも、最高だったわ。今回、コリンがお付きのもので、本当によかった。ありがとう、コリン」
頭をぽんぽんと撫でる。コリンは照れ臭そうに笑った。
他の三人も、主役不在の状況ながら劇を成立させようと努力していた──何より、こんな失敗をしでかしたわたしに、優しく接してくれた。
この三人なら、もしかしたら、なってくれるかもしれない。
──わたしの、お友達に。