6章 ギャンブルのからくり
ギャンブル屋の中に入ると、犬、猫の区別がつかない生物を発見した。
「あれはなんですか」
「イヌネコです。犬と猫の遺伝子を半分ずつ持っています」
犬と猫の要素を半物ずつ持っているとは。現実世界にも、そのような動物がいればよかったのに。
「イヌネコを利用して、ワンワンニャーニャーというゲームをしています。ワンとニャーと叫ぶことのできる動物が、次にどのように鳴くのかを予想します。当てれば賞金は1.3倍。外れると全額没収されます。こちらについては、一回当たりの掛け金額は10000ゴールドと決められています」
得られる金額の期待値は0.65倍。ゲームをやる人が多ければ多いほど、店はもうかるシステムとなっている。
アカネは未来予知能力を使って、イヌネコがどのように鳴くのかを500回分確認する。「ワンワン」は290回、「ニャーニャー」は210回だった。「ワンワン」、「ニャーニャー」と均等に鳴くわけではないようだ。
「ギャンブル屋には、マシンがどれくらいの音を出すのかを当てるゲームもあります。音量については、100段階からランダムとなっています。当たった場合は10倍、外れた場合は没収です」
シンプルなゲームではあるものの、競馬を予想するよりもはるかに難しい。適当に予想して、当たる確率はほぼゼロだ。
予想が難しいわりに、オッズも低く設定されている。アカネはぼったくりという印象を持ってしまった。
一〇人ほどの人間たちが、熱のこもった討論をしている。討論というより、喧嘩さながらだった。
「あれは騙しあいゲームですね。勝利者には役職に応じたお金が配分されます」
人狼ゲームみたいなものかな。人間の汚い部分をみることになりそうだ。
「あのゲームなら、アカネさんにも参加いただけるかもしれません」
人間同士の駆け引きというのは、なかなかに難しいところがある。何十年、何百年生きたとしても、身に着けることはできない。
20代の女性は、マシンのある所に案内した。
「一獲千金マシンです。一回10000ゴールドでプレイでき、超低確率で1億ゴールドを入手できるシステムです」
本当にあたりは入っているのかな。アカネはそのようなことを思ったので、中身を確認することにした。
マシンのあたり確率は、100000万分の1となっていた。10億円をかけると、1億円をもらえる計算である。還元率はわずか10パーセントしかない。
「アカネさん、どうかしましたか」
「いえ、なんでもないです」
からくりをばらしてしまったら、営業妨害で訴えられることになる。一獲千金マシンのあたり確率については、永久的に伏せておかねばなるまい。
「アカネさんはマシンの順番を変える、中身をみえる能力があるので、1億ゴールドを簡単にもっていかれてしまいます。何度もあてられてしまうと、店は一瞬で傾きます」
借金をしてはいけないという意識が強すぎるのか、ぼったくり店さながらになってしまっている。「ギャンブル屋」ではなく、「ぼったくり」と命名したほうが、しっくりとくる。
ギャンブルを楽しむ気持ちになれなかったので、店をあとにすることにした。今後、ここを利用することはないと思われる。