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5章 入店禁止

 お金ができたことだし、ギャンブル店を訪ねてみようかな。現実世界における大学時代の負けを、何十倍、何百倍にしたい。

 正々堂々と勝負するからこそ、ギャンブルの醍醐味を感じることができる。マツリから聞かされていた超能力は使用しないつもりだ。

「ギャンブル屋」を利用しようとすると、二〇前後の女性が姿を見せる。先ほどの店員とは、異なる人物だった。

「申し訳ありません。アカネ様は当店をご利用いただけません」

「どうしてですか」

 20代前後の女性は、頭を繰り返し下げていた。謝罪しているというより、お願いしているように感じられた。

「超能力を使える人間がギャンブルをしたら、当店は瞬く間につぶれてしまいます。それゆえ、ご利用は遠慮いただきます」

 マツリから訊かされていた通りだった。超能力者というのは、入店できないシステムのようだ。

「収支が極端なマイナスになってしまったら、50年以上の強制労働に課されてしまいます。従業員を守るためにも、アカネさんを入れるわけにはいきません」

 悪いことをしていないのに、立ち入り禁止になってしまうとは。理不尽すぎる仕打ちに、アカネはがっくりときてしまった。

 情報屋に入ってから、一時間くらいしか経過していない。それにもかかわらず、店員はどうして超能力を使えることを知っているのか。その部分について、確認を取ることにした。

「私のことにどうして詳しいんですか」

「マツリさんが大きな声でいっていたので、他の方の耳に入ったんです。それがこちらまで流れてきました」

 わずか一日で有名人になってしまったのか。異端な人間というのは、どこの世界に行っても目立ってしまうのかな。

「食べ物や空気は必要ない、魔法を使えることも耳に挟みました。人間というより、超能力者さながらです」

 そんなことありませんよ。私は見た目も中身も完全な人間ですよ。アカネは心の中でそのようにつぶやいたものの、女性には届きそうになかった。

「ギャンブルには参加していただけないものの、中を確認することはできます。店内をのぞいていかれますか」

「はい。ありがとうございます」 

 相手からの好意に対して、条件反射的にありがとうといってしまうとは。ビジネスマナーの習慣というのは、完全に抜けないようだ。

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